本間宗究(本間裕)のコラム

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2024.9.4

通貨発行益と税金(4)

「1971年のニクソンショック」の前後から始まった「世界的なマネーの大膨張」については、現在、世界中の人々が興味と感心を示し始めた状況とも思われるが、残念な点は、「ほとんどの人がマネー膨張のメカニズムを理解していない事実」が指摘できるものと考えている。つまり、「共同体の規模拡大に伴い信用の総量が増え、その結果として、信用を形にした通貨の残高増加につながる」という「私自身の仮説」が、いまだに検証されていない状況でもあるが、この点に関して注目すべき出来事は、「1980年代の中国と1990年代のロシアが、世界の金融市場に参画してきた事実」だと考えている。

より詳しく申し上げると、「共産主義国の中国とソ連(現在のロシア)が、資本主義国家の様相を携えて、世界の金融市場に参画してきた事実」については、「グローバル共同体の成立」を意味するとともに、「2010年前後に付けたデリバティブ残高のピーク」の原因の一つだったものと想定されるのである。

しかし、現在では、ご存じのとおりに、「ロシアによるウクライナへの軍事侵攻」に象徴されるように、「東西冷戦が復活した状態」であり、また、「脱ドル化の為替政策」が世界的に広まっている状況であることも見て取れるのである。つまり、現在の「世界的な金融システムや通貨制度」については、根本の「信用」が失われながらも、辛うじて、「表面上の華やかさ」が保たれている「根のない切り花」のような状態とも言えるのである。

そのために、今後の注目点としては、「デジタル通貨の供給源だった約600兆ドルのOTCデリバティブ」が瞬間的な崩壊を見せる可能性であり、また、その後に予想される「CBDC(中央銀行デジタル通貨)や紙幣の大増刷」がもたらす「中央銀行の通貨発行益(シニョリッジ)」が指摘できるものと考えている。つまり、この時に発生する変化としては、「国民が支払う四種類の税金」に関して、最後の「国民が気付く状況下でインフレ税が支払われる段階」、すなわち、「ハイパーインフレの世界的な発生」が想定されるからである。

より具体的には、「政府や通貨への信用」が完全に失われ、「影も形も存在しないデジタル通貨」が「金融界の裸の王様だった事実」に気付かされることにより、世界中の人々が、一斉に、「実物資産」へ殺到する展開が想定されるからである。別の言葉では、「5千年から6千年の歴史を持つ貨幣」に関して、「現在のデジタル通貨が、どれほど異常な状態だったのか?」に気付いた人から、「換物運動」が始まるものと想定されるが、今回の問題点は、やはり、「80億人の人々が、こぞって参加する可能性」だと感じている。