本間宗究(本間裕)のコラム

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2024.9.5

40年前から始まっていた国家財政の連鎖破綻

「マネーの膨張」は、「バランスシートの拡大」、すなわち、「資産と負債の残高増加」につながるとともに、「貧富の格差」を増長させる効果があるものと考えているが、この点が世界的な規模で実験されたのが、「1971年のニクソンショック以降の世界」だったものと感じている。つまり、「1980年代の中南米諸国」や「1990年代の東欧諸国」、そして、「2000年代のアフリカ諸国」で発生した「国家の財政破綻とハイパーインフレ」に関しては、「バランスシート大膨張の恩恵を受けた国家」と「受けることができなかった国家」の運命を表している状況のようにも思われるのである。

より詳しく申し上げると、「1980年代初頭」から始まった「先進諸国の金利低下」や「米国の株価上昇」については、前半が、「日本における民間金融機関のバランスシート大膨張」、そして、後半が、「先進諸国の民間金融機関におけるデリバティブの大膨張」が主な原因だったものと考えられるのである。つまり、「通貨発行益を手にした国々」と「享受できなかった国々」との間で、「貧富の格差」が広がるとともに、「国家財政の連鎖破綻」が、ゆっくりと進展していった状況のようにも感じられるのである。

別の言葉では、「コンピューターネットワーク拡大」の恩恵を受けて、「デジタル通貨が、世界各国を瞬時に往来できる環境」が作り出されたことにより、「デリバティブの大膨張」と「国家間における貧富格差の拡大」が発生したものの、今後の注意点としては、「大膨張した負債を、どのように処理するのか?」が指摘できるものと思われるのである。つまり、「民間金融機関におけるオフバランスも含めたバランスシート大膨張」については、現在、「資産価格の下落により、膨大な金額の不良資産を発生させている状況」であるために、今後の対応策としては、「CBDC(中央銀行デジタル通貨の大量発行」か「紙幣の大増刷」による「中央銀行の通貨発行益」しか残されていない状況とも想定されるのである。

そのために、現時点で必要なことは、「信用だけを本位とした現在の通貨制度」、すなわち、「単なる数字が貨幣(デジタル通貨)となり、大きな影響力を世界に及ぼしている状況」そのものが崩壊の危機に瀕している事実を理解することとも想定されるのである。つまり、「貨幣の歴史」をたどりながら、「現在のデジタル通貨が、どのようにして生み出されたのか?」、あるいは、「現在、どれほどの資産と負債が世界に存在するのか?」などを理解する必要性のことでもあるが、私自身としては、「1600年前の西ローマ帝国が、実際に、どのような崩壊の過程を辿ったのか?」、そして、「これから、どれほどの規模で世界的なハイパーインフレが発生するのか?」などの研究に励みたいと感じている。