本間宗究(本間裕)のコラム

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2024.10.2

金融破綻のメカニズム(3)

「西暦2000年前後に起こった変化」として思い出されることは、「想定どおりのITバブル崩壊と金価格上昇」であり、また、「想定外の為替動向」だったが、実際には、「1996年に私自身が考案し、2001年まで有効だった為替理論が、2002年頃から機能不全に陥った状況」のことである。つまり、「二国間の信用乗数比較により、今後の為替を予想する手法」に関して、この前後から、変調が始まり、調査の結果として判明した原因が、「デリバティブの大膨張」だったことが理解できたのである。

より詳しく申し上げると、「信用乗数=マネーストック÷マネタリーベース」の計算式において、「簿外で取引されるデリバティブの大膨張により、正確なマネタリーベースの把握が難しくなった状況」に陥ったことが理解できたのである。しかも、「デリバティブの残高」については、「2000年前後に約1京円」という規模だったものが、その後、「2007年前後に約8京円」という大膨張を見せたことも認識できたのである。

別の言葉では、「民間金融機関のバランスシートが簿外で大膨張し、大量のデジタル通貨が産み出された状況」であり、その結果として、「クレジットの価格を意味する西洋諸国の金利が、未曽有の低水準にまで落ち込んだ状況」のことである。そして、「デリバティブの残高が伸び悩み始めた2007年前後」から発生し始めたのが、いわゆる「GFC(世界的な金融大混乱)」であり、この点については、ほぼ予想通りの出来事だったものの、想定外の事態としては、その後の「金融メルトダウン」が挙げられるのである。

つまり、「GFC」については、「金融界の大地震」であり、その後の「金融のメルトダウン」については、「インフレの大津波が世界を襲い始めた展開」だったものと考えているが、この時の注意点としては、「金融界のブラックホール」とでも呼ぶべき「世界的なコンピューターネットワークの中をデジタル通貨が瞬間的に移行する状態」が挙げられるものと感じている。具体的には、「大津波が海上で大波を発生させる状態」と同様に、「デリバティブの崩壊後に、大量のデジタル通貨が、最初に国債市場、次には不動産市場、そして、その後に株式市場に流れだし、次々と何でもバブルを発生させた展開」のことである。

そして、現在では、「金融界のホーキング放射」とでも呼ぶべき状況、すなわち、「デジタル通貨が、徐々に、実物資産に流れ始めた段階」に移行し始めたものと想定されるが、この時の問題点としては、やはり、「巨額なデジタル通貨の残高」と「小さな実物資産の総額」に関して「天と地ほどの違い」が存在する状況だと考えている。