本間宗究(本間裕)のコラム

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2024.10.1

金融破綻のメカニズム(2)

「通貨制度の寿命は約50年」という「ケインズの言葉」のとおりに、「1971年から始まった『信用本位制』と呼ぶべき通貨制度は、現在、崩壊の危機を迎えている状況」とも思われるが、この点に関して需要なポイントは、「個人と企業」や「民間金融機関」、そして、「中央銀行」や「国家」のバランスシートが、この間に、どのような変化を見せたのかを理解することだと考えている。別の言葉では、「マネーが、どのようにして創られ、また、どのようにして消滅したのか?」を考えることでもあるが、最初の変化としては、「民間企業と個人の部門からバランスシートの膨張が始まった事実」が指摘できるようである。

つまり、「実体経済の成長とともに、民間企業や個人に富が蓄積された状況」のことでもあるが、この点に関して注目すべき事実は、「1980年代から90年代にかけて発生し、崩壊した日本のバブル」だと考えている。具体的には、「1980年代の後半」に発生した「日本の株と土地のバブル」のことだが、実際には、「上がるから買う、買うから上がる」というような熱狂の結果として、「日本の土地を売れば、日本以外の南極までをも含めた全世界の土地が買える」と言われたような状態だったことも見て取れるのである。

より詳しく申し上げると、「約2500兆円」という規模にまで「日本の土地の時価総額」が膨張したわけだが、この時の「バランスシートの変化」としては、「個人と民間企業」、そして、「民間金融機関」のバランスシートが膨張し、その後に、収縮した状況だったことも理解できるのである。つまり、「株式や土地の価格が上昇しているときには、民間金融機関からの借り入れにより、個人と民間企業の資産と負債が膨張するとともに、資産効果により含み益が出た状態」のことである。

しかし、「1990年代のバブル崩壊」がもたらした変化は、「バランスシートの非対称性」が産み出した「マイナスの資産効果」、すなわち、「負債が一定でありながら、資産価格の下落によってもたらされた不良債権」だったことも理解できるのである。別の言葉では、「資金繰りの悪化」により「大量の企業倒産、そして、不良債権」が発生したわけだが、この時の注目点としては、「民間金融機関に発生した不良債権が、結果として、世界の金融システムを崩壊させる危機にまで行きついた状況」が挙げられるものと考えている。

具体的には、「1997年から1998年にかけての世界的な金融危機」のことだが、この時に取られた政策は、「民間金融機関のバランスシートを簿外で膨張させる政策」、すなわち、「OTCデリバティブの大膨張」だったことも見て取れるのである。