本間宗究(本間裕)のコラム

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2024.11.18

日本のエンゲル係数

「日本のエンゲル係数が、現在、急上昇中」というニュースが報道されたが、この事実から理解できることは、「日本の失われた30年間」に関する原因であり、また、「国民を犠牲にして金融システムを助けようとした政府や日銀の思惑」だと感じている。つまり、「約42年ぶりの高水準にまで上昇したエンゲル係数」については、「日本人の家計に余裕がなくなった状況」を表すとともに、「過去25年間の実質的なゼロ金利政策の弊害を象徴する出来事」とも思われるのである。

より詳しく申し上げると、「日本のGDPは、過去25年間、ほぼ横ばいの状況」だったものの、一方で、「日本のマネーストックを代表する指数であるM2」については、「西暦2000年に約630兆円」だったものが、「西暦2024年では約1250兆円」という規模にまで増加していることも見て取れるのである。つまり、「マネーの残高が急増しながらも、日銀によって吸収された状況」のために、「市中に出回る資金が、ほとんど変化しなかった状態」だったことも理解できるのである。

そして、「なぜ、このようなことが行われてきたのか?」については、基本的に、「日本や世界の金融システムを守りながら、国家の財政破綻を防ぐ」という目的が存在したものと考えられるが、この結果として発生しているのが、現在の「円安」とも言えるのである。別の言葉では、「国家の体力」を象徴する「金利」と「為替」に関して、今までは、「低金利」を維持してきたために、「円安」に見舞われてきたことも見て取れるのである。

そのために、これから予想されることは、「約550兆円の規模にまで膨らんだ日銀の当座預金」、すなわち、「2001年に、それまでの準備預金から当座預金に名称変更し、残高が急増した日銀の負債」に関して、何らかの激変が発生する可能性のようにも感じている。具体的には、「金利上昇に見舞われた日銀が、日銀券の発行残高を急増させながら、当座預金残高を急減させる可能性」でもあるが、このことは、典型的な「財政ファイナンス」とも言えるために、「世界の金融システムに対して、劇的な衝撃を与える可能性」も想定されるのである。

より具体的には、現在、危惧され始めた「世界的な流動性の枯渇」に関して、「日銀を始めとして、世界の中央銀行が大量の資金を供給する可能性」のことでもあるが、同時に理解できることは、「これほどまでの金融危機は、やはり、1600年前の西ローマ帝国崩壊の時にまで、歴史を遡る必要性がある状況」だと感じている。