
本間宗究(本間裕)のコラム
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2024.12.10
シリアの政権崩壊
12月8日に「シリアのアサド大統領」がロシアに亡命し、1970年から親子二代にわたって継続してきた「シリアの独裁国家体制」が終焉の時を迎えたが、この点については、「シュペングラーの西洋の没落」で指摘されていた「皇帝主義の崩壊」が当てはまる状況のようにも感じている。つまり、「1971年のニクソンショック」の頃から始まった「グローバル共同体の形成過程」で、「通貨の力」が強くなり、その結果として、「大都市の形成」や「皇帝主義の発展」そして、「独裁者の誕生」などが、世界各国で発生してきたものと考えられるのである。
別の言葉では、「共同体の規模拡大」に伴い、「個人の相対的な力」が弱くなった結果として、数多くの「隷従者」が「独裁者」を産み出した構図とも言えるが、現在では、「グローバル共同体の崩壊」に伴い、「いろいろな分野で分裂や分断が発生している状況」とも思われるのである。具体的には、「東西冷戦構造の復活」であり、また、「米国を中心にした国家共同体の分断」などのことでもあるが、前述の「シリアの政権崩壊」については、その直前に発生した「韓国の戒厳令騒動」と同様に、「国家の分裂や分断が世界的に発生し始めた状況」のようにも感じられるのである。
そのために、今後の注意点としては、「共同体の分裂が、これから、どのような進展を見せるのか?」であり、実際には、「より小さな共同体へ、分断や分裂が移行する可能性」とも言えるのである。具体的には、「金融システムの崩壊」が危惧されるものと考えているが、この点については、以前から指摘するとおりに、「約600兆ドルのOTCデリバティブ」や「約300兆ドルの世界的な債務残高」が、「いつ崩壊しても不思議ではない状態」とも考えられるのである。
より詳しく申し上げると、「世界各国で、強烈なクラウディングアウトが発生している状況」であり、実際には、「国家の資金繰り」を賄うために、今まで、ありとあらゆる手段が講じられてきたものの、現在では、「財政ファイナンスによる政府の資金調達」しか残されていない状態とも想定されるのである。
つまり、「デリバティブの大膨張」で創り出された「大量のデジタル通貨」が枯渇した結果として、今後は、「紙幣の大増刷」が世界的に実施されるものと思われるが、この結果として発生する現象は、ご存じのとおりに、「未曽有の規模での世界的なハイパーインフレ」とも理解され始めているのである。