本間宗究(本間裕)のコラム

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2024.12.19

ソ連崩壊の悪夢が蘇る時

「ウクライナ戦争の行方」については、現在、「トランプ次期米国大統領の誕生」などにより、「いつ、停戦が実施されるのか?」が、世界的に注目を浴び始めているが、この点に関して気になるのは、「なぜ、ロシア国民が、プーチン大統領を、依然として支持しているのか?」という点である。つまり、「ロシア国民の関心事」としては、「ウクライナで戦争が発生し、多くの人々が亡くなっている事実」よりも「安定した自分の生活を送ること」であるとも理解されているようだが、この時の注意点としては、「1991年のソ連崩壊」が挙げられる状況とも思われるのである。

より詳しく申し上げると、「プーチン大統領の高支持率」の背景としては、「1991年のソ連崩壊後に、ハイパーインフレで国民が塗炭の苦しみを味わった事実」が指摘できるものと感じている。つまり、「戦争の苦しみ」よりも「ハイパーインフレの苦しみ」の方が、人々の記憶に鮮明に残っているために、いまだに、「安定した生活を与えてくれたプーチン大統領に対する信頼感」が存在する状況のようにも思われるのである。

そのために、今後の注目点としては、すでに始まった「ロシアのハイパーインフレ」に関して、「ソ連崩壊時の悪夢が、いつ、ロシア国民の脳裏によみがえるのか?」が指摘できるものと想定されるのである。別の言葉では、「国民の生活が苦しくなった時に、プーチン大統領への支持率が低下し、独裁者の存続が危うくなる事態」が発生する可能性が指摘できる状況のようにも思われるのである。

より具体的には、「1991年と同様に、国債の発行が難しくなり、大量の紙幣が増刷される可能性」のことでもあるが、当時の思い出としては、「きわめて短期間のうちに、ルーブルの価値が3000分の1にまで急落した状況」が指摘できるのである。しかも、この時には、「安くなったソ連の株式に対して、海外からの買いが殺到した」という状況だったものの、結局は、「1991年だけではなく、1998年にも、大インフレが再来した」という展開だったのである。

このように、現在の「ロシア国民」としては、「再び、1990年代の悪夢が襲ってこない状況」を望んでいるものと思われるが、最近の変化としては、「プーチン大統領の特別軍事行動」そのものが、「さまざまな要因により、かつてのハイパーインフレを再発させかかっている状況」が指摘できるとともに、「プーチン大統領そのものが、国民の安定した生活を脅かし始める存在に変化した可能性」も考えられるようである。