
本間宗究(本間裕)のコラム
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2024.12.25
インフレ統計指数の問題点
インフレに関する統計数字については、以前から、いろいろな議論が出ているが、私自身が考える「最も大きな問題点」としては、「債券や株式、あるいは、土地などの金融商品が統計数字に含まれていない事実」が指摘できるものと考えている。つまり、本来の「インフレ」については、「マネーの残高」と「商品の量」とを比較した数字から算出されるべきものが、実際には、「大量のデジタル通貨」と「いろいろな金融商品」が存在しながらも、「統計数字には、旧来の商品バスケットしか含まれていない状態」であることも理解できるのである。
別の言葉では、「デジタル通貨の海」とでも呼ぶべき「コンピューターネットワークで形成された大量のデジタル通貨」が、「2008年のGFC(世界的な金融大混乱)以降、債券や土地、そして、株式のバブルを発生させた状況」、すなわち、「債券や商業不動産、あるいは、株式などのデジタル化された金融商品に殺到し、価格を暴騰させていた状況」だったことも見て取れるのである。しかし、一方で、「インフレ指数に組み入れられている実物資産」などは、「価格統制」が実施され、「インフレ指数の上昇」に繋がらないような工夫がなされていたことも理解できるのである。
そのために、今後の注意点としては、「インフレの大津波」が、「債券」から「不動産」、そして、「株式」から「実物資産」へと移行する過程で、「既存のインフレ指数に対して、どのような影響を及ぼすのか?」を考えることが挙げられるのである。つまり、今までは、「大量のデジタル通貨が、インフレ指数に影響を及ぼさない資産の価格を上昇させてきた状況」だったものが、今後は、「未曽有の規模の資金が、インフレ指数に影響のある実物資産へと流れ始める展開」が想定されるのである。
具体的には、すでに価格急騰が始まっている「カカオ」や「コーヒー」、あるいは、「オレンジジュース」に加えて、「貴金属」や「原油」などの価格も急騰局面に入るものと思われるが、この時の注目点は、「急騰するインフレ指数に対して、人々が、どのような反応を見せるのか?」だと感じている。
つまり、「100万人に一人も気付かないうちに進行する」と言われる「ハイパーインフレ」については、基本的に、「インフレ統計指数の問題点」が存在するようにも思われるが、現時点では、「1991年のソ連」などと同様に、「紙幣の大増刷」が世界的に実施され始める段階に差し掛かっているものと思われるのである。