本間宗究(本間裕)のコラム

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2024.12.30

先進国の債券自警団

現在、「先進国の政府債務の拡大に伴い、債務自警団が動き出してきた」と言われているが、実際には、「過度な財政支出がある国の債券を売却したり、購入時に高い利回りを求めたりする投資家の出現」のことである。そして、彼らの注目点として、「国債の純発行額」、すなわち、「国債の総発行額から中央銀行の買い入れ額と償還による再投資額を引いた金額」が指摘されているが、この点については、注意が必要だと考えている。

つまり、現在の「先進国の国家財政」は、「1991年のソ連」と似たような状況とも思われるが、実際には、「財政ファイナンス」や「国債のマネタイゼーション(国債の貨幣化)」といわれる「財政赤字を賄うために、政府の発行した国債等を中央銀行が通貨を増発して直接引き受ける方法」が取られる事態のことである。より具体的には、「最初に長期国債が売れなくなり、その後、短期国債も売れなくなった結果として、インクが無くなるまで紙幣の大増刷を実施した展開」のことである。

そのために、今後の注目点としては、「いつ、長期国債や短期国債が売れなくなるのか?」が指摘できるが、その時期としては、「日銀のバランスシート」からも明らかなように、「民間金融機関からの借り入れ」を意味する「当座預金」の残高が頭打ちになり、「日銀券の発行残高」が増え始める時だと考えている。別の言葉では、「中央銀行の国債買い入れ」に関して、今までの手法である「民間からの借り入れ」が難しくなり、本格的な「財政ファイナンス」が実施され始める時のことである。

そして、このような状況下では、「償還による再投資」についても、ほとんど皆無になる可能性も想定されるために、その時には、「国債の総発行額と純発行額が同じ金額になる可能性」も考えられるのである。つまり、「1991年のソ連」と同様に、「規律を失った政府に対する債券自警団の反撃」とでも呼ぶべき状況が発生する可能性であり、このことは、「歴史の教訓」として、人類の意識に深く刻み込まれているものと思われるのである。

しかも、今回は、「1971年のニクソンショック」から始まった「人類史上、初めての通貨制度」、すなわち、「信用だけを本位とし、単なる数字が、世界のコンピューターネットワークを縦横無尽に駆け回る状況」の崩壊も想定されるのである。そして、この時には、もう一つの歴史的教訓である「信用を積み上げるためには長い時間が必要であるが、崩壊は一瞬にして訪れる」という言葉が、人々の意識に上るものと思われるが、今までの推移から判断すると、現在は、時間的な余裕が完全消滅した状況のようにも感じている。