本間宗究(本間裕)のコラム

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2025.1.14

3次元の実体経済と4次元のマネー

50年近くに及ぶ「私自身の実践投資」を振り返ると、「3次元の実体経済」の分析よりも「4次元のマネー」の分析や理解の方が、未来予測に関して、はるかに役立ったものと感じている。つまり、「実体経済」に関しては、基本的に、「フローの性質」、すなわち、「今日の仕事が翌日も継続される保証がない状態」のために、「時間的な持続性や連続性」が必要とされる「未来予測」に関しては、ほとんど役立たなかったようにも思われるのである。

しかし、一方で、「マネー」に関しては、「ストックの性質」、すなわち、「残高が継続して積みあがる性質」、そして、「実体経済の動向に左右されにくく、また、長期的な連続性が判断しやすい状況」のために、「次にどのような展開が発生するのか?」が理解しやすかった状況のようにも感じられるのである。別の言葉では、「共同体の規模拡大に伴い、マネーの残高が増えていった状況」を理解することでもあるが、この点に関してもっとも悩まされたのが、「通貨発行益と税金との関係性」だったようにも考えている。

具体的に申し上げると、「民間企業の成長に伴い民間金融機関が成長した段階」については、既存の「マクロ経済学」で議論されていたものの、問題は、「1980年代の初頭から始まった、民間金融機関が簿外でデリバティブを大膨張させた事実」でもあった。つまり、「1971年のニクソンショック」から始まった「信用本位制と呼ぶべき通貨制度」において、「前半の約26年間」は、「日本を中心としたバブル相場の発生と崩壊」が「マネーの膨張と縮小」、あるいは、「不良債権の移行」に関して、大きな要因となったのである。

しかし、一方で、「後半の約26年間」、すなわち、「1998年から2024年」においては、「欧米諸国を中心としたデリバティブの大膨張が、前半と比較して約30倍ものバブルを発生させた状況」だったことも理解できるのである。しかも、「この過程で、どのようにして不良債権が移行し、また、どのようにして新たなマネーが創造され、その後に税金として政府に回収されたのか?」を理解することにより、「資産価格の上昇メカニズム」が説明可能な状況だったようにも感じられるのである。

つまり、「2008年のGFC(世界的な金融大混乱)」以降のバブルについては、最初に、「世界的な国債価格の上昇と下落」であり、また、その次には、「世界的な不動産価格の上昇と下落」、そして、現在では、「世界的な株価の上昇と下落」が発生している状況でありながら、今後は、「大量の資金が、一斉に、貴金属や原油、あるいは、農産物などの実物資産へと殺到し始める展開」のことである。