本間宗究(本間裕)のコラム

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2025.1.27

ベイルインとベイルアウト

海外では、現在、「JPモルガンのダイモンCEO」や「ブリッジウォーターのレイ・ダリオ氏」などの著名人が、盛んに、「金融システムの崩壊危機」を訴えているが、この理由としては、かつての「大きすぎて潰せない(Too Big To Fail)」という認識が、現在では、「大きすぎて救えない(Too Big To Be Saved)」に変化している状況が指摘できるものと考えている。別の言葉では、以前の「ベイルアウト」、すなわち、「危機に陥った金融機関に対して国や中央銀行・国際機関のような公的主体が資金を注入する方法」が。現在では、「ベイルイン」、すなわち、「投資家や債権者の負担で銀行の破綻を回避する方法」へと移行を始めたものと思われるのである。

より詳しく申し上げると、現在では、「先進各国の政府や中央銀行までもが破綻の危機に瀕している状態」となっているために、以前とは違い、「危機に陥った金融機関の救済」が難しくなっている状況とも言えるのである。つまり、現在では、「世界の金融システムそのものが、崩壊する可能性」が危惧されているために、今後は、「債務の貨幣化」を意味する「財政ファイナンス」が想定されているものと考えられるのである。

また、「なぜ、これほどまでの危機が予想されているのか?」については、基本的に、1600年前に発生した「西ローマ帝国崩壊」以降の貨幣史を研究する必要性があるものと思われるが、実際には、「西暦400年代から1900年前後」までの「約1500年間」は、「金や銀が通貨として使用されていた状況」だったことも見て取れるのである。つまり、この期間の「マネーの残高」については、現在とは違い、ほとんど変動がなかったものの、「過去100年間」、特に、「1971年のニクソンショック」以降は、「人類史上、未曽有のスピードで、マネーの大膨張が発生した状況」だったことも理解できるのである。

そのために、今後の展開としては、「ベイルインの実施」により「金融機関や政府への信用」が、ほぼ瞬間的に消滅し、その結果として、世界の資金が、一斉に、換物運動へと向かい始める展開も想定されるのである。つまり、「信用は築き上げるのに長い時間が必要でありながら、崩壊は一瞬のうちに発生する」という言葉のとおりに、「人類が、今まで積み上げてきた通貨への信用が、驚くほど短期間のうちに崩壊する可能性」のことである。しかも、今回は、今まで人類が経験したことのなかった「デジタル通貨」、すなわち、「コンピューターネットワークの中を、単なる数字が駆け巡りながら、大量のマネーを造り出した状況」でもあるために、「これから、どれほどの大変化が、世界の金融界を襲うのか?」については、決して、予断を許すことができない状況のようにも感じている。