
本間宗究(本間裕)のコラム
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2025.2.5
ロンドン金プールとニクソンショック
現在、「国際商品市場における金と銅との米国流入」が、世界的な注目を浴び始めているが、この点については、数年前から指摘されてきた「世界的な貴金属の奪い合い」を象徴する出来事の一つのようにも感じている。しかも、今回の出来事は、「1960年代のロンドン金(ゴールド)プールの崩壊」や「1971年のニクソンショック」と同様に、「既存の通貨システム崩壊」の予兆のようにも思われるのである。
より詳しく申し上げると、「1961年から1968年まで実施されたロンドン金プール」については、「欧米7カ国が手持ちの金をプールし、ロンドンの金市場の操作を実施することにより、金価格の安定を図ろうとしたもの」と説明されているが、実際には、「金本位制の崩壊を防ぐために、35ドルの金価格を維持しようとした動き」とも考えられるのである。
しかし、その後の展開としては、「ベトナム戦争で戦費の乱用を行ったアメリカに対する信用喪失」が発生し、「フランスやドイツなどが、米ドルではなく、金(ゴールド)による支払い」を迫った結果として、それまでの「金を本位とした通貨制度」が崩壊したことも見て取れるのである。つまり、「1971年のニクソンショック」以降は、「政府の信用などを本位とした通貨制度」が始まったものの、現在では、「1960年代の後半」と同様に、「大量の政府債務を積み上げる米国への信用喪失」が、世界的に発生している状況とも言えるのである。
より具体的には、「既存の通貨制度と金融システムが崩壊を始めている可能性」のことでもあるが、この点については、「約50年」という「ケインズが指摘する通貨制度の寿命」と合致する状況のようにも思われるのである。つまり、冒頭の「世界的な貴金属の奪い合い」については、「トランプ関税がもたらした一時的な動き」ではなく、十年以上も前から始まっていた「アメリカ帝国の崩壊」を示唆している可能性のようにも感じられるのである。
そのために、今後の注意点としては、「今回のデジタル革命や米国のマグニフィセント7などが、デリバティブとデジタル通貨の絶頂期を象徴していた可能性」を認識しながら、「村山節(みさお)の文明法則史学」が指摘する「西暦1200年から約800年間も継続した物質的な利益を求める西洋文明」が、「1600年前の西ローマ帝国」と同様に、終焉の時を迎えている可能性を考えることのようにも思われるのである。