本間宗究(本間裕)のコラム

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2016.3.25

金融界のドーピング現象

昨年まで「ダラス地方連銀の総裁」を務めた「リチャード・フィッシャー氏」が、「3月8日」に、米国の「CNBC」という報道番組に出演し、驚くべき発言をしている。具体的には、「我々は、金融システムに、ヘロインとコカインを注入した」、また、「現在は、リタリン(合法シャブと呼ばれる覚醒剤)」が使われている」というコメントだが、このことは、いわゆる「量的緩和(QE)」が、実際には、「リフレーション(通貨膨張)政策」であり、今後の「ハイパーインフレ」を予想させる状況とも言えるようである。

つまり、「中央銀行のバランスシートを大膨張させて、国債を買い付ける方法」が、実際には、「末期がん患者に、モルヒネを打つような状況である」と言いたかったようにも感じている。しかも、フィッシャー氏は、以前に、「FRBは、弾薬の尽きた巨大兵器となった」ともコメントしたそうだが、この点について、海外の「金融の専門家」は、「ウォール街のギャンブラーたちを、より一層、裕福にさせるために、市中の人々から預金を奪った」とも述べているのである。

具体的には、「日銀の状況」からも明らかなように、「当座預金」を増やしながら「国債を買い付ける」という行為は、実質上、「国民の預金を使って、国債を買い支えている状況」とも言えるのである。別の言葉では、「国民の知らないうちに、いつの間にか、預金が国債に換わっていた状況」のことだが、問題は、このような「金融界のドーピング現象」に限界点が訪れた時に、「どのような事が起こるのか?」ということである。

つまり、「お金」は「残高」であり、「インフレでしか、価値が減少しない」という性質があるが、今後は、今までの「量的緩和」が変化し、実際には、「日銀による資金の吸い上げ」から「資金が、紙幣の形で、急速に市場に出回る状況」が想定されるのである。より具体的には、現在の「日本のGDP」が「約500兆円」であるのに対し、「日本のM2が約920兆円」という状況は、「大量の資金」が供給されている状況を意味しているが、現在では、「日銀により、吸い上げられた状況」とも言えるのである。

しかも、今回は、「国債の買い支え」により、「マイナス金利」までもが発生したが、現在では、「MMFの完全消滅」のように、さまざまな問題が引き起こされている。つまり、「フィッシャー氏」が述べたように、現在は、「健全な金融システム」ではなく、「ヘロインやコカインにより、延命措置が計られている状態」とも考えられるのだが、今後は、たいへん近い将来に、この点について、何らかの大事件が発生するものと考えている。