本間宗究(本間裕)のコラム

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2016.10.15

お金の謎が解けない理由

金融や投資業に携わり、今年で40年目の年を迎えたが、この間、一貫して追求してきたテーマの一つが「お金の謎」を解くことだった。つまり、「今まで、誰も、お金の謎を解いたことがない」ということが、経済学の定説とも考えられているのだが、幸いなことに、10年ほど前、この問題は解決できたものと考えている。しかし、この時に感じた不思議な点は、「お金の謎」を追求する人が、時間とともに減少し、反対に、「お金を欲しがる人」が、世界的にも、加速度的に増えていったという事実である。

世界中の人々が、お金を求めると、当然のこととして、お金の量は、天文学的な数字にまで増える。一例として挙げると、「日本を売れば、日本以外の全世界の土地が買える」と言われた「日本の土地バブル」の時、当時の「時価総額」は、約2500兆円にすぎなかった。しかし、現在では、「デリバティブ(金融派生商品)」という妖怪が世界を徘徊し、2007年前後のピーク時には、約8京円という金額にまで大膨張したのである。しかも、このお金を保有しているのが、「世界の国家」と「一握りの金融機関」という、きわめて異常な状態となっているが、ほとんどの人は、この点に気付いていないのである。

かつて、「自動車王」と呼ばれた「ヘンリー・フォード」は、次の言葉を戦前に残している。「国民が銀行や金融システムを理解していないことが重要だ。なぜならば、かりに理解したら、明日の朝にも革命が起こると思われるからだ」というものであり、逆説的で真理を突いた言葉とも言えるが、当時と比較すると、現在の「お金の時価総額」は、「蟻と鯨ほどの規模の違い」となっているのである。

つまり、「お金の謎」が解けると、「お金を保有している人々」の既得権が失われるとともに、多くの国民が、「騙されていた」という感想を抱くことが危惧されているようだが、現在、最も興味深い点は、「現代のお金は、影も形も存在しない、単なる数字に変化した」という事実である。そして、「コンピューターマネー」となったお金が、世界中を駆け巡り、さまざまな金融商品に、瞬時に変化しているが、ほとんどの人にとっては、「目の前の一万円札が、本当のお金である」と、いまだに信じ込まされているのである。

換言すると、「裸の王様」の物語のとおりに、純粋な目を持った一人の子供に、「王様は裸だ」と言われるのを恐れている人々が、「お金の謎」を解けないように、さまざまな妨害をしているようにも感じられるが、一方で、「王様の耳はロバの耳」という物語のとおりに、「真実は、必ず、暴露される」ということも間違いのない事実でもあるようだ。