本間宗究(本間裕)のコラム

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2016.11.4

実物商品と金融商品

「イエレンFRB議長」が提起したように、現在の経済学には、いろいろな問題点が存在するが、特に、私が注目している点は、「お金」と「商品」との関係性であり、また、それぞれの変化である。具体的には、時代とともに、「お金」と「商品」が、価値と形態を変えている状況のことだが、既存の経済理論では、この点が、ほとんど無視された状況となっているのである。

その結果として、本当の意味での「インフレ(通貨価値の下落)」や「デフレ(通貨価値の上昇)」が理解されていない状況でもあるようだが、基本的には、「貨幣の総量」と「商品の総量」との関係性により、「通貨の価値」が決定されるのである。つまり、「商品の量」よりも、「貨幣の量」が多い場合には、「通貨価値の下落」という「インフレ」となり、また、反対の場合には、「デフレ」が発生する状況のことである。

しかし、現在の問題点は、「商品」に関して、「実物商品」の他に、「金融商品」が大量に生み出されたことにあるが、この点が、既存の「経済理論」で無視されているために、現在の統計数字では、「表面上のデフレ状態」となっているのである。別の言葉では、過去数十年間において、「デリバティブ(金融派生商品)」を中心にして、大量の金融商品が創られたのだが、この「金融商品」には、「貨幣」と「商品」との両方の性格が存在し、「インフレ」を判断する場合には、この点も考慮する必要性が存在するのである。

しかも、この時に発生した現象として、「コンピューターマネー」という「単なる数字」が、「コンピューターネットワーク」の中で大膨張した点が指摘できるが、現在では、「貨幣」と「商品」との両方が、「仮想現実」とも言える状態になっているのである。別の言葉では、「国家」や「通貨」への信頼感が存在する限り、「単なる数字」でも購買力を持ち、実物商品との交換が可能なのだが、いったん、「信用の喪失」が始まると、「膨大な資金が、金融商品から、実物商品に流れ出す状況」も想定されるのである。

 具体的には、「金融商品」の二面性とも言える「貨幣」と「商品」の関係において、「商品」の価値が激減した時に、「貨幣」の側面だけが強調される状況のことだが、実際には、「コンピューターマネー」が「紙幣」に交換される状況が想定されるのである。つまり、「金融商品」の価格下落により発生した「不良債権」を埋めるため、「大量の紙幣」が増刷され、また、その「紙幣」が、「実物商品の価格」を押し上げる状況のことだが、実際には、このことが、本当の「インフレ」を意味しているのである。