本間宗究(本間裕)のコラム

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2017.1.5

日本の創造的破壊

「12月26日」に行われた「黒田日銀総裁の演説」では、「シュンペーターの言葉」が引用されたが、ご存知のとおりに、「シュンペーター(1883-1950)」は、「技術革新の重要性」と「創造的破壊」を主張した経済学者である。つまり、「新たな技術や商品が開発され、既存の商品が陳腐化するものの、結果として、世の中全体が進歩する」という点を強調したのだが、今回の注目点は、「なぜ、黒田総裁が、このような意見を述べたのか?」ということでもあるようだ。

つまり、「技術革新」や「創造的破壊」は、現在、「実体経済に関する経済理論」として認識されているために、「金融政策」については、それほど重要性が存在しないものと思われるのである。別の言葉では、「黒田総裁の思惑」として、「AI(人工知能)」などの技術革新を強調することにより、「金融政策の行き詰まり」から、人々の目をそらすことにあったようにも感じられるのである。

より具体的には、「新しい欲望が、生産の側から消費者に教え込まれ、したがって、イニシアチブ(主導権)は生産の側にあるというふうに行われるのが常である」と述べながら、「商品の需要は、生産者によって決められる」という点を、黒田総裁は主張しているが、この点については、全くの「本末転倒の考え方」とも言えるようである。つまり、私自身としては、基本的に、「どのような商品が売れるのか?」について、「お金の総量」と、「人々の興味と関心」で決定されるものと考えているからである。

そのために、今後、最も注目すべき点は、「お金の総量」に関して、劇的な変化が起こる可能性でもあるが、実際には、「日銀の赤字激増」や「国債価格の暴落」などにより、「日銀」のみならず、「国家」に関しても、「資金繰りの問題」に直面する可能性のことである。つまり、「どのような技術革新が起きようとも、お金がなければ、その商品に対して需要が発生しない状況」が危惧されるのである。

ただし、当面は、典型的な「ギャロッピング・インフレ」から「ハイパーインフレ」への移行過程として、きわめて大きな需要が、さまざまな商品に発生するものと考えているが、問題は、その後の展開とも想定されるのである。つまり、本当の意味での「創造的破壊」が、「日本」のみならず、「世界」の金融界で起こるものと考えているが、このことは、「自然科学」ではなく、「社会科学」に「技術革新」、あるいは、「新たな理論の創出」が発生する可能性とも考えられるようである。