本間宗究(本間裕)のコラム

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2017.3.27

過大評価された低金利状態

3月17日の「ファイナンシャルタイムズ紙」に、「低金利の要因は金融市場にあり」という記事が掲載され「なぜ、2010年代に入り、金利低下が続いているのか?」が疑問視され始めた。具体的には、「BISの経済顧問」である「ヒュン・ソン・シン氏」の意見を紹介しながら、「実体経済」と「マネー経済」の「違い」に言及しているが、この時に、「近代の経済学者は、実体経済の指標だけを観察し、金融システムが、どのように機能しているのかを考慮しない傾向がある」とも述べられているのである。

つまり、私と同じような意見が紹介されるとともに、「長期債の利回りが、経済の先行指標として過大評価されている可能性」を指摘しているが、このことは、「現在の低金利状態は、デフレの結果として発生した事態ではない」という考え方のことである。具体的には、「ドイツの保険会社が、純額ベースで国債購入の4割を占めている理由」として、「デフレを予測したからでも、リスクに対して、より寛容になったからでもない」と結論付けられているのである。

より具体的には、「会計規則と支払い余力規制に縛られて、利回りの低下時に、通常の投資論理に逆らってでも、リスクヘッジのために、国債購入を増やさざるを得なかった」という説明がなされているが、このことは、典型的な「バブル状態」とも言えるようである。つまり、「政府や中央銀行、あるいは、保険会社などが、国債を異常な価格にまで買い上げた結果として、マイナス金利が発生した」という現状に対して、現在、ほとんどの人が、「低金利状態はデフレ状態を表しており、将来的にも、インフレが発生する可能性が低いのではないか?」と理解している可能性のことである。

つまり、現在では、「原因」と「結果」とが混同されているものと推測されるが、このことも、「ケインズ」が指摘する「通貨の堕落が引き起こすインフレは、百万人に一人も気付かないうちに進行する状況」を表しているようだ。しかし、問題は、やはり、「国債の買い支え」が難しくなった時に、一挙に、「インフレの大津波」が襲う可能性、すなわち、「国債価格の暴落」により、急激に、金利が上昇する状況のことである。

ただし、現在では、前述のとおりに、多くの人が「低金利は、デフレを意味する」という「誤った考え」に支配されており、今後、相場への対応が難しくなることも予想されるが、現時点で必要なことは、すでに、「クリーピング(忍び寄る)インフレ」が終了し、「ギャロッピング・インフレ」が始まった点を理解することでもあるようだ。