本間宗究(本間裕)のコラム

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2017.4.17

急伸中のエンゲル係数

現在、「日本のエンゲル係数(食糧費÷消費支出)」が急伸中であり、実際には、二人以上の家計において、「2016年」に「0.8%」上昇し、「25.8%」にまで増えている。つまり、「2005年前後」に「約23%」にまで低下した状況が、現在では、「1980年代半ばの水準」にまで戻っているが、この点には、大きな注意が必要だと感じている。具体的には、「困窮し始めた日本人」を象徴するような数字だと考えているが、実際のところ、「終戦直後の約60%」が、その後、急速に低下し、「1970年代」には、「30%」を切ったという状況でもあったからだ。

そして、この点に関して、私自身としては、「1980年代半ば」に発生した「人々の意識変化」が思い出されるが、実際には、「野村証券の田淵節也氏」が「世界のマネーが病んでいる」とコメントし、また、「人々の欲しいもの」が、それまでの「家」や「車」などから、「お金」へと変化した状況のことである。つまり、この前後から、世界的な「マネーの大膨張」が発生し、その結果として、「人々の通貨への信頼感」が、急速に高まっていったことが見て取れるのである。

別の言葉では、「お金が神様に変化した時代だった」ものと考えているが、このピークは、やはり、「2005年前後」に、「お金で、人の心まで買える」という言葉が流行した時でもあったようだ。つまり、「お金(資本)」が「最も大切なものである(主義)」という考えに、世界中の人々が染まった時期だったようだが、この直後に発生した事件が、「100年に一度の金融大混乱」といわれた「2008年のリーマンショック」だった。

このように、「1980年代」から「現在」までを考えても、実に大きな変化が「世界のマネー」で発生していることが見て取れるが、これから想定される事態は、更なる「エンゲル係数の上昇」であり、また、「人々の通貨に対する意識変化」でもあるようだ。具体的には、「都会に住む人を中心にした生活苦」などにより、「世の中は、いったい、どうなっているのか?」、そして、「世界は、今後、どうなるのか?」などを悩み始めた状況のことである。

そして、今後、最も重要な点は、有限の「お金」と「時間」を、「どのように使うのか?」ということであり、このことを決定するのが、人々の「心の方向性」や「価値観」でもあるようだ。つまり、これから想定される「インフレ(通貨価値の下落)」の時には、世界全体で、「人生に対する価値観」が変化する可能性が存在することが想定されるのである。