本間宗究(本間裕)のコラム

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2017.7.4

今、ここから始まる未来

6月25日に「BISの年次総会」が開催されたが、「総支配人のカルアナ氏」は、今年も、昨年に続いて興味深い言葉を使われた。具体的には、「今、ここから始まる未来(Looking beyond the here and now)」というものだが、昨年は、「危惧していた将来が現実になる日(The future becomes today)」でもあった。つまり、「2016年からの1年間で、劇的な変化が発生し、世の中は、新たなステージに入った」ということが、カルアナ氏の主張したかったことのようにも思われるのである。

より具体的には、「グローバル化が更に進展すれば」という条件付きで、「過去のようなインフレが発生しないのではないか?」という結論に落ち着いたようだが、内容を深く吟味すると、まったく違った結論が読み取れるようにも感じられるのである。つまり、「グローバル化に関する二つの波動」や「グローバル金融危機(GFC)」などが、詳しく説明されるとともに、今後の「出口戦略」について述べられているのである。

つまり、すでに始まった「世界的な景気回復と株高、そして、インフレ」について、「これから、どのような展開が予想されるのか?」が、詳しく議論されているのだが、私自身が、最も注目した点は、「現在が、出口戦略が、世界的に実施されるかどうかを議論している段階ではなく、実際には、いつ、どれほどの規模とスピードで実施されるのかを考えなければいけない状況に直面している」という説明だった。

そして、この時に、「今後、金利の引き上げが、短期間の内に、また、急激に実施された時には、世界経済全体に対して、甚大な被害を与える可能性が存在する」、しかし、一方で、「あまりにもゆっくりとした、そして、僅かな金利の引き上げ」では、「ある時に、突然として、金融政策が手遅れとなる可能性が存在する」とも指摘されているが、このことは、「経済の過熱」と「インフレの急騰」を抑えるために、「急激、かつ、集中的に金利を上昇させる必要性」のことである。

また、かりに「インフレ率」が上昇しなくとも、あまりにも低い金利を、長期間継続させると、「時間の経過とともに、債務残高を膨らませ、また、バブルを発生させることにより、金融システムの安定性を損なうとともに、マクロ経済学的なリスクを増大させる危険性がある」とも述べられているのである。つまり、現在では、典型的な「ギャロッピング・インフレ」が発生した状況のようにも感じられたが、この点については、年内にも答えが出るものと考えている。