本間宗究(本間裕)のコラム

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2017.10.3

ルービニ教授のニューノーマル

現在、「世界的な議論」となっているのは「景気が良いのに、なぜ、インフレにならないのか?」という問題であり、実際のところ、既存の経済理論が通用しないために、いろいろな識者が意見を述べているが、今回は、「ルービニ米ニューヨーク大学教授」と「イエレンFRB議長」のコメントを紹介しながら、実情を考えてみたいと思う。具体的には、「過去20年程、世界的な低インフレが継続した状況」に関して、「ルービニ教授」は「ニューノーマル(新たな価値基準)」の可能性を述べているが、このことは、「現在の低インフレ状態が、今後も、長く続く可能性」を考慮しているようである。

また、「イエレン議長」は、現在の「低インフレ状態」が「一時的」なものであり、今後は、「2%」や「3%」、あるいは、それ以上の「インフレ率」を予想しているが、この点については、「学者的な意見」と「実践の智慧」との違いが指摘できるようである。つまり、「2000年当時の金価格」や「2012年の日本株」のように、「約20年間も下がり続けた市場」について、「学者」は、往々にして、「ニューノーマル(新たな価値基準)な時代に移行したために、今後も、同じ傾向が続く」と考えがちになるのである。

しかし、一方で、「実戦経験が豊富な人々」は、「20年も下がり続けた銘柄は、今後、大幅な上昇をするはずだ」という認識を持つわけだが、この点については、過去の歴史が実証しているものと考えている。しかも、現在のように、「2016年の7月前後」に「マイナス金利」がピークを付け、また、「アメリカ」を中心にして、「金融政策の正常化」、すなわち、「異常な金融政策からの出口戦略」が始まった状況下では、今後、大幅な「インフレ率の上昇」という事態も考えられるのである。

別の言葉では、「学者」が「新たな価値基準」を持ち出してきたときは、往々にして、「時代の転換期」を表すものと考えているが、この点に関して思い出されることは、かつての「Qレシオ」である。具体的には、30年ほど前の「日本株バブル」の時に、「含み益を考慮した実質株価純資産」が持ち出され、結果として、「資産保有銘柄を中心にして、株価が急騰した状況」のことである。

ただし、今回は、「低インフレを理由にした国債バブル」が、すでに発生しており、今後は、「債券から実物資産へ」という「資金の移動」が、より顕著になるものと考えているが、実際には、このことが、古典的な「インフレ(通貨価値の下落)」を意味しており、間もなく、世界中の人々が、この事実に気付くことになるようだ。