本間宗究(本間裕)のコラム

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2017.11.27

変化を始めた日銀の異次元金融緩和

「11月13日」に「スイスのチューリッヒ大学」で行われた「黒田日銀総裁の演説」では、明らかな変化が見て取れるようだが、実際には、「リバーサル・レート」という言葉を用いて「金融緩和の副作用」に言及し始めているのである。具体的には、「金利を下げすぎると、預貸金利鞘の縮小を通じて銀行部門の自己資本制約がタイト化し、金融仲介機能が阻害されるため、かえって金融緩和の効果が反転(reverse)する可能性がある」という考え方のことだが、実際には、「マイナス金利の弊害」とも考えられるようである。

つまり、現在では、人類史上初めての「マイナス金利」が、依然として継続しているわけだが、このことは、「お金を借りた人が金利を受け取る」という、きわめて「本末転倒した事態」とも言えるのである。その結果として、「日銀」のみならず、「民間金融機関」の「財務状態」までもが、危機的な状態に陥っているものと想定されるが、実際には、「国債の買い付け」に関して、「歴史的な大転換期」に差し掛かってきたようにも推測されるのである。

より具体的には、「2016年末」と「2017年11月20日」の「日銀のバランスシート」を比較すると、「総額」が「約476兆円から約518兆円」と「約42兆円の増加」となっている。また、「国債の保有残高」は「約30兆円の増加」となっており、「黒田総裁」が公言してきた「年間に80兆円の増加」とは、全くかけ離れた状態となっているのである。

そして、この理由としては、「当座預金残高の伸び悩み」が指摘できるようだが、実際には、「約11ヶ月間で、約32兆円の増加」という状況が理解できるのである。つまり、「異次元金融緩和」の実態は「民間金融機関から資金を借り入れて、国債を異常な高値にまで買い上げる」ということだったものと考えているが、現在では、「民間金融機関」にも資金的な余裕が無くなった状況とも想定されるのである。

別の言葉では、「満期まで保有し続けると損失が出る国債」に関して、「日銀」のみならず、「民間金融機関」も、「これ以上の買い余力」が失われた状況とも言えるようだが、問題は、「今後、金利の急騰、すなわち、国債価格の暴落が発生した時に、どのような事態が発生するのか?」だと考えている。つまり、「日銀」としては、「紙幣の大増刷」しか残された手段が存在しないようだが、今後の注目点は、「何時、市場参加者が、この事態に気付くのか?」ということでもあるようだ。