本間宗究(本間裕)のコラム

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2018.4.23

道に食あり、食により道を失う

最近の「官僚の不祥事」については、まさに、「食により道を失った状況」とも言えるようだが、このことは、「禅」の言葉である「道に食あり、食により道を失う」というものである。つまり、「道」という、「本来、自分が為すべきこと」を実行していれば、必ず、「食」という「生活に困らない状況」に恵まれるものの、反対に、「自分の名誉や地位、あるいは、お金を追求する態度」に終始すると、その時には、「正義や道徳が失われ、不祥事などが発生する事態が待っている」という事実である。

戦後の日本人は、まさに、「道に食あり」の状況だった。「焼け野原の状態」から、「自分にできることは何か?」を考え、必死に生きてきたが、現在では、「お金がなければ生きていけない」と考えるようになり、「お金や地位のためなら、どのようなことでもする態度」に変化してきたようである。

そして、この分岐点が、1980年代に発生した「バブル」だったようだが、この時に発生したのが、巨額の不良債権だった。具体的には、約2500兆円にまで達した「土地の時価総額」に関して、「約一割の不良債権」が発生した状況のことだが、最初に、「民間企業や個人が、大きな被害を受けた」という状況でもあった。

その結果として、「民間企業」において「食により道を失う状況」となり、さまざまな不祥事が発生したが、その後は、「民間金融機関」に不良債権が移行し、同様の不祥事が発生した。そして、現在では、「政府」や「日銀」に、不良債権が移行した状態となっているが、この結果として発生したことが、冒頭の事件とも考えられるのである。

別の言葉では、「日本人の堕落が窮まり、世の中の膿み出しが、最後の段階にまで達した状況」のことだが、現在は、まさに、「真っ暗闇の状態」とも言えるようである。具体的には、「少子高齢化」や「巨額の国家債務」などの問題に直面しながらも、「政府や官僚が、信用できない状態」であり、また、「百歳までの寿命があったとしても、お金が心配だ」と考える人が増えたからだ。つまり、「夜明け前に、必ず、最も暗い瞬間を迎える」という状況のことだが、現在は、まさに、このような時を迎えているものと考えている。

そして、今後は、「窮まれば変じ、変ずれば通ず」という「易経」の言葉とおりに、大きな変化、あるいは、大事件が発生し、その時に、「夜明けの光」が照らし始めるようだが、このことは、まさに、「道」を求め始める「人々の意識変化」とも言えるようだ。