本間宗究(本間裕)のコラム

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2018.7.4

金利のスナップバック

「6月24日」に「BIS(国際決済銀行)の年次総会」が開催され、私自身は、新たに総支配人に任命された「カルステンス氏」のコメントに注目したが、内容としては、単なる「精神論」に終始したようにも感じられた。しかし、一方で、「実務担当者の危機意識」が昨年以上に感じられる状況であり、実際に、頻繁に使われたのが「スナップバック(SNAPBACK)」という言葉だった。直訳すると、「パチンとはじき戻る」、あるいは、「急速に元の状態に戻る」という意味になるが、今回は、「過去数十年間の金利低下」、あるいは、「過去数年間の異常な超低金利状態」に関して、「金利が急速に上昇するリスク」を想定しているものと思われた。

別の言葉では、私と同様に、「国債価格の暴落が、世界的な金融システムや通貨制度を崩壊に陥れる可能性」を危惧しているようにも感じられたが、「これから、どのようなリスクが存在するのか?」については、私とは違い、「大恐慌シナリオ」を想定しているようでもあった。具体的には、「ノンバンク」に関する「流動性のリスク」や「解約のリスク」などが、大きく取り上げられており、実際には、「金利の急騰」が、さまざまな資産価格の下落を引き起こし、結果として、「1929年の大恐慌的な状態に陥る可能性」までもが、暗に示唆されていたようにも感じられた。

ただし、私自身としては、この点が「実務担当者の勇み足」のようにも思われたが、さすがに、「中央銀行の中央銀行」と呼ばれるように、「BIS(国際決済銀行)」については、「世界の金融」について、全ての資料が整っていることには、間違いがないようである。つまり、「巨大なノンバンクの破綻」については、何らかの根拠が存在する可能性もあり、実際に破たんすると、当然のことながら、巨大な「リスク」が伴うのが当然のことであるが、この時に注意すべき点は、「最後の貸し手」である「中央銀行」が、「どのような手段を取るのか?」という点である。

具体的には、「中央銀行」が「紙幣の増刷」を実施し、市中に資金供給する可能性である。そして、「BIS」としては、この点を熟知しており、「今後、金利が世界的に急騰した時に、どのような事態が発生するのか?」も、よく議論されたものと思われるが、今回の年次総会では、驚いたことに、この点が、ほとんど、言及されていなかったのである。そのために、何らかの意図が隠されているようにも思われたが、結局は、「BIS」と「各国中央銀行」との間で、「責任のなすり合い」が行われ始めた可能性が存在するようにも感じた次第である。