本間宗究(本間裕)のコラム

* 直近のコラムは、こちら

2018.8.3

金融緩和の副作用

最近、「金融緩和の副作用」という言葉が頻繁に使われるようになったが、この点には、注意が必要だと感じている。つまり、日経新聞によると、「日銀による株式の買い付けが、株価形成に歪みを生じるような事態」が副作用の一例として指摘されているが、現在、大きな問題となっているのは、「地銀」を中心にして、「金融機関が、どのようにして収益を確保するのか?」という「ビジネスモデルの問題」とも言えるからである。

つまり、「超低金利」や「マイナス金利」の状態が、長く続いたために、「金融機関の収益構造」が、大きく変化したわけだが、この点については、実際のところ、「日銀の当座預金」が諸悪の根源とも考えられるようである。具体的には、「約390兆円」もの資金を金融市場から吸い上げて、「国債の買い付け」に使われたからだが、この点については、典型的な「金融抑圧(ファイナンシャル・サプレッション)」でもあったようだ。

より詳しく申し上げると、「日銀が、国債のみならず、株式などを買い付けた事実」については、一種の「価格操作」のような状況でもあったようだ。つまり、「金利」のみならず、「株価」までもが、日銀が指摘するとおりに、「きわめて異常な水準にまで歪められた状況」となっているからだが、実際には、「オーバープレゼンス」という言葉のとおりに、「日銀の存在」が金融市場で目立ちすぎている状況であり、今後、想定される「最も重大な副作用」は、このことが、根本的な原因になるものと考えている。

つまり、大膨張した「日銀のバランスシート」について、「今後、どのような方法で正常化や出口戦略が実施されるのか?」が、まったく見えず、実際には、「デフレの存在」を理由にして、「時間稼ぎ」を行っている状況とも思われるのである。そのために、今後の注目点は、「限界点に行き着いた時に、どのような副作用が発生するのか?」ということだと考えているが、過去の歴史が教えることは、現在の「アルゼンチン」や「ベネズエラ」のように、「ハイパーインフレ」と「高金利」に見舞われる事態である。

しかし、現時点で、不思議な点は、「いまだに、ほとんどの日本人が、この事態を憂慮していない」という事実であり、「日大のタックル事件」や「ボクシング協会の告発事件」などと同様に、「水面下で問題が山積していながらも、かろうじて、実際の事件になっていない状態」のようにも思われるのである。そのために、今後の注目点は、「事件が発覚した時に、マスコミや国民が、どのような対応を取るのか?」であり、実際には、「日本人に特有のパニック状態が引き起こされる可能性」が危惧される状況でもあるようだ。