本間宗究(本間裕)のコラム

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2018.10.2

キャッシュレス社会という幻想

現在、「キャッシュレス社会の到来」が、多くの人々に確実視されているようだが、この点には、大きな注意が必要だと感じている。つまり、「通貨」の歴史や本質を考えると、現在の「キャッシュレス社会」については、一時的な「徒花(あだばな)の状態」であり、実際には、昨年の「ビットコイン」と同様に、「金融メルトダウン」が進行する過程での「バブル的な状況」のようにも思われるからである

より詳しく申し上げると、「2008年のリーマン・ショック」以降、世界的な「金融のメルトダウン」が進行し、その過程で、「国債のバブル」や「ビットコインのバブル」などが発生したが、現在の「キャッシュレス社会」については、この点に関する「最終段階の動き」のようにも感じられるのである。つまり、「デリバティブ(金融派生商品)」を始めとした「全ての金融商品」、そして、「株式」や「商品」などの「実物商品」において、「本来の価値以上の価格上昇、あるいは、残高の異常な急増」などが発生することが、典型的な「バブルの状態」とも思われるのである。

具体的には、現在の「デリバティブのバブル」や「世界的な国債バブル」などのことであり、この点については、現在の「キャッシュレス社会」という理解にも、「クレジット残高の増加」などの症状が現れているものと感じている。そのために、これから注意すべき点としては、「金利」が急騰し、「紙幣の大増刷」が始まった時に、「通貨の流通コスト」という「決済費用」が急増する可能性、すなわち、「紙幣の運搬コスト」や「保険費用」などの増加だと考えている。

つまり、これから想定される「大インフレの時代」においては、今までとは違い、「中央銀行」が大量の紙幣を増刷し、「人々は、紙幣を使わざるを得なくなる状況」が想定されるのである。しかも、最後の段階では、10年ほど前の「ジンバブエ」などと同様に、「100兆ドル」などのような「高額紙幣」までもが発行される可能性もあるようだが、基本的に言えることは、「通貨や国家に対する信頼感が強くなる時には、通貨の質が落ちる」ということである。

換言すると、現在の「キャッシュレス社会」は、「通貨の質が最も劣化した状態」となっており、今後は、反対に、「通貨の質」が高まる状況も予想されるのである。そのために、私自身としては、「将来的に、人類が進化し、より信用度の高い社会が実現した時に、本当のキャッシュレス社会が到来する」ものと考えている。