本間宗究(本間裕)のコラム

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2019.2.12

金融界のパイピング現象

現在では、すでに「金融界のパイピング現象」が発生し始めたものと思われるが、「パイピング現象」とは、「ダム」や「堤防」などの決壊時に起こる、いわゆる「蟻の一穴」と呼ばれる状況のことである。つまり、「堤防」の外と内とで、大きな「水圧の差」が発生し、その結果として、小さな「パイプ状の穴」が開くことを意味しているが、この点を、現在の「金融界」に当てはめると、「大膨張したマネー経済」と「小さな実体経済」との間に、「小さな穴」が開いた状況のようにも感じられるのである。

具体的には、「パラジウムの価格」が、現在、史上最高値を更新中、また、「アルゼンチンの株価」も、スパイラル的な価格上昇を見せており、また、「ベネズエラ」についても、「制御不能なハイパーインフレ」の状態となっている。そのために、これらの出来事は、「今後、先進各国が、どのような状態に見舞われるのか?」を考えるうえで、決して、見逃すことのできない現象とも思われるのである。

つまり、過去10年間に起こったことは、いわゆる「金融のメルトダウン」と呼ばれる「金融システムの崩壊現象」であり、実際には、「仮想現実の世界」において、「コンピューターマネー」が急減する状況でもあった。そして、「国民の預金が、日銀の内部で国債に投資された」というような状況でありながら、ほとんどの人々は、「アベノミクス」や「異次元の量的緩和」などの言葉を信用した結果として、「どのようなことが起こっていたのか?」に気づかなかったものと想定されるのである。

別の言葉では、「ゼロ金利」や「マイナス金利」などの状況下で、「国民が貰うべき金利」が「政府」や「日銀」に留まっていた状況のことでもあるが、この点については、「諸行無常」という言葉のとおりに、「時間の経過とともに、必ず、変化が発生する」ということが「歴史の真理」とも言えるようである。つまり、現在では、世界的に「マネー経済」と「実体経済」との「境界線」が消滅しかかっており、我々の実生活にも、「金融メルトダウンの影響」が及び始めたものと想定されるのである。

具体的には、前述のとおりに、「世界各国で、本格的なインフレ現象が始まった可能性」のことだが、このことを決定付ける現象は、世界的な「国債価格の暴落」だと考えている。そして、現在は、まさに、その前夜の状況、すなわち、「日米欧の中央銀行が、再び、量的緩和を実施するのではないか?」というような「口先介入」により、「国債価格の暴落」が、かろうじて、抑え込まれている状況のようにも感じられるのである。