本間宗究(本間裕)のコラム

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2019.3.7

LINEの価値が300万円

先日、日経新聞に、「LINEの価値が300万円」という記事が出ていた。つまり、「いくら貰えたら、LINEを一年間やめますか?」という「仮定の問題」に対する答えが「300万円」であり、このことは、「実感している豊かさなのに、国内総生産(GDP)をはじめ、従来の経済統計では測り切れない消費者余剰である」と結論付けられているのである。

たいへん興味深い設問の設定であり、一見すると、正当な理論のようにも思われるが、「経済学の基本」である「商品」と「マネー」との関係性からは、「何が商品であり、また、誰が、その商品に対して、300万円の対価を払うのか?」が、まったく見えない状況とも言えるようである。つまり、「実体経済が、今まで、どのようにして成長してきたのか?」、そして、「この時に、マネー経済が、どのようにして発展してきたのか?」を考えると、「ある商品を使わないことに対する価格」などは、全く論外の思考法とも思われるのである。

別の言葉では、「三次元の抽象論、あるいは、観念論」にすぎず、「四次元の具体論」からは、本末転倒した理論とも言えるようだが、興味深い点は、「このような意見が出ても、誰も、不思議に思わない状況」、あるいは、「積極的に支持する人々が存在する状況」とも言えるようである。つまり、「本末転倒した時代」においては、「本末転倒した意見」が出る状況のことだが、このことを象徴する事態が、前述の「商品」と「マネー」の関係性とも考えられるのである。

具体的には、「1971年のニクソンショック」以降、私が提唱する「信用本位制」という通貨制度が始まり、現在では、「マネー経済」が「実体経済」の「約10倍」という規模にまで膨らんでいるのである。そして、人々は、「価値が高くなったお金」を稼ぐために、「命までをも削らざるを得ないような状況」となっているものと思われるが、このことは、「物質的な豊かさ」を追求した「西洋の時代」が、最終段階に入った状況を意味しているものと考えている。

つまり、「文明法則史学」が教えることは、「これから、精神的な豊かさを求める東洋の時代が始まる可能性」であり、また、「文明の交代期」には、「本末転倒現象」の発生により、「時代の大転換」が起こる状況である。そして、このような観点からは、決して、前述の意見も、驚くことはないものと思われるが、問題は、大混乱期に直面した時に、多くの人々が、パニック状態に陥る可能性だと考えている。