本間宗究(本間裕)のコラム

* 直近のコラムは、こちら

2020.1.4

銀の現物に殺到し始めた日本の個人投資家

昨年末に驚かされたことは、「日本の個人投資家」が「銀(シルバー)の延べ棒」を買い始めたことにより、店頭から現物が消えたことだった。つまり、注文が殺到し、短時間で売り切れの状態になる事態が頻発したわけだが、この理由については、貴金属商も理解できないような状況でもあった。そのために、この点には、今後も継続して注目したいと考えているが、私自身としては、「個人投資家が、『お金の謎』を考え始めたことが、今回の異変の原因ではないか?」とも感じている次第である。

つまり、私自身が、30年ほど前に経験したことが思い出されたわけだが、実際には、「1987年のブラックマンデー」に大きな衝撃を受け、その後、「お金とは、いったい、何なのか?」を真剣に考え始めた状況のことである。具体的には、「過去の歴史」を振り返りながら、「お金の性質」を考えたわけだが、このことは、「奥の細道」を「中尊寺の金堂」に向かって歩き始めた状況だったようにも感じている。

より詳しく申し上げると、「私自身が、他の人々とまったく違った道を歩き始めた状況」のことでもあるが、当時は、「ほとんどの人々が、お金を求めて、東海道を金閣寺に向かって歩き始めたような状況」だったのである。つまり、「お金とは、いったい、何なのか?」ではなく、「お金が儲かるには、どのような方法を取るべきか?」を、世界中の人々が考え始めたのである。

そして、結果としては、「人類史上、最大規模のマネー大膨張」が発生したわけだが、この点については、実際のところ、「100年ほど前から、さまざまな兆候が出ていた状況」だったことも見て取れるようである。具体的には、「中央銀行の創設」や「金本位制の変遷」などのことだが、この点に関して、決定的な事件となったのが、やはり、「1971年のニクソンショック」だったものと感じている。

つまり、この事件をキッカケにして、世界の通貨が、目に見えない「デジタル通貨」などへと変化し、その結果として、「1980年代初頭に誕生したデリバティブ」が、「2008年前後」に「約8京円」という規模にまで大膨張した事実のことである。より具体的には、「金融商品の性格」として、「商品」と「通貨」の二面性が存在するわけだが、現在では、両方の性質が消え去った結果として、「金融システムや通貨の安定性」が不安視されているのである。そして、このことが、冒頭の「銀への投資」の原因であり、また、「30年以上も前に、私が実践したこと」だったのである。