本間宗究(本間裕)のコラム

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2020.6.3

デジタル化の落とし穴

「コロナ・ショック」の影響を受け、現在は、一種の「デジタル化のバブル」とでも呼ぶべき様相を呈しているが、この点には、大きな注意が必要だと感じている。つまり、「映像」なども含めた「情報」については、確かに、「デジタル化の恩恵」は、きわめて大きなものでもあるが、この時に誤解されていることは、「通貨(マネー)」に対する影響とも言えるのである。具体的には、現在の通貨制度である「信用本位制」において、基本的な貨幣となっている「デジタル通貨」、あるいは、「コンピューターマネー」が、これから想定される「大インフレ」の時代に、全く役に立たなくなる可能性のことである。

つまり、目に見えない「単なる数字」である「デジタル通貨」については、「コンピューターネットワーク」という「仮想現実の世界」でしか、力を発揮できない性質が存在するのである。別の言葉では、「1971年のニクソンショック」、そして、「1980年代初頭に誕生したデリバティブ(金融派生商品)」などの要因により、過去数十年間、「デジタル通貨」が、世界的に、大きな影響力を持ったわけだが、現在では、これらの条件に対して、全く、逆の動きが発生していることも理解できるのである。

具体的には、「20年以上も継続した、世界的な超低金利状態」、そして、「中央銀行を中心にした、強引な国債の買い支え」などの要因が、「2019年の9月17日」に米国で発生した「資金の逆流」により、現在、大きな転換期を迎えているのである。つまり、「僅かな金利上昇」により、「信用本位制」の崩壊や、「デジタル通貨」の消滅が、実際には、あっという間に、世界的に発生するものと思われるのである。

そして、このタイミングを判断する方法としては、「先進各国の中央銀行における資金繰り」が、参考になるものと考えているが、実際には、「日銀」のみならず、「米国のFRB」や「ECB(欧州中央銀行)」においても、「紙幣の増刷以外に、残された手段が無くなった状況」とも考えらえるのである。

そのために、これから考慮すべき点は、「どれほど有効、かつ、正確な情報が、世界的に共有されるのか?」ということであり、決して、「デジタル通貨で、お金儲けを企てること」ではないものと考えている。つまり、今回の「デジタル化」については、「情報を選別することにより、経済学や心理学などの社会科学を、どのようにして発展させるのか?」に対して、時間とエネルギーを使うべきであり、決して、「デジタル通貨のバブル」に踊らされるという「落とし穴」にはまらないことだと思われるのである。