本間宗究(本間裕)のコラム

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2020.8.16

インフレ指数の盲点

「インフレやデフレは貨幣的な現象である」という点は、以前から指摘されていたことだが、具体的には、「商品」と「通貨」との関係性において、「商品よりも、通貨の量が上回った時に、商品の価格が上昇する」というものである。つまり、江戸時代などにおいても、「米」などの実物商品を考えた場合に、「収穫量が一定な条件下で、市中における通貨の流通量が増えた」というような状況下では、当然のことながら、「米の価格が上昇した」という展開となったのである。

しかし、現在の問題点としては、「商品の種類」が急増し、また、「通貨の種類」も多様化した事実が指摘できるわけだが、特に、「1980年代初頭」から始まった「デリバティブの残高急増」については、従来の経済学で、全く対応ができない状況となっているのである。つまり、現在の「インフレ指数」には、「デリバティブ」のみならず、「株式」や「土地」などの資産が含まれておらず、そのために、「現在、世界にどれだけの商品が存在し、また、どれだけの通貨が流通しているのか?」が把握されていないのである。

別の言葉では、過去20年あまりの期間に急拡大した「デジタル通貨」のほとんどが、「デリバティブなどの金融商品」に流れた状態となっており、そのために、現在の「インフレ指数」は、世界の実態を表していない状況となっているのである。そして、この理由としては、先進各国の政府とメガバンクが結託して、「超低金利状態」を作り出すことにより、「国家の財政破綻」を防いできた可能性、すなわち、「中央銀行が、国民の預金を借りて国債を買い付け、金利負担を減らしてきた状況」が指摘できるものと感じている。

しかも、最近では、「コロナ・ショック」により「人々の興味と関心が、お金よりも命の問題に向かった状況」となっており、その結果として、「自分のお金が、どのような状態になっているのか?」について、注意を払う余裕が失われた状況とも思われるのである。そして、このような状況下で、現在では、「日米欧の国々で、金融政策が完全に行き詰った状況」、あるいは、「紙幣の大増刷が、世界的に始まった状況」となっているのである。

別の言葉では、「紙幣」という「古典的な通貨」の発行量が拡大する状況下で、「デリバティブ」をはじめとした「金融商品」の量が急減しており、そのために、今後は、大量の「紙幣」が、「一次産品」や「二次産品」などの「限られた商品」に殺到するものと思われるが、現在の「貴金属の価格急騰」は、その兆候に過ぎず、今後は、「食料品」などにまで、この動きが波及するものと考えている。