本間宗究(本間裕)のコラム

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2020.9.10

金融市場のメダカとクジラ

先日、日本の株式市場では、「ソフトバンクのデリバティブ取引」が大きな話題となったが、具体的には、総額で「約175億ドル(約1.8兆円)」もの資金を、「米国株やオプション取引に投資している状況」のことである。しかし、この点に関して興味深い事実は、海外で、「ソフトバンクは、金融市場におけるメダカにすぎない」という意見が出ていることであり、実際のところ、「米国のJPモルガン」は、「約2.6兆ドル(約275兆円)」もの金額を「株式関連のデリバティブ」に投資しているのである。

そのために、「ソフトバンクはメダカであり、本当のクジラはJPモルガンである」という理解が、現在の「世界的な常識」とも言えるようだが、私自身としては、この点について、大きな違和感を覚えている。つまり、「金融界の本当のクジラは、金利のデリバティブである」という理解のことだが、実際のところ、「デリバティブの総額」については、「2000年に約8000兆円」、「2008年前後に約8京円」、そして、「現在が約6京円」という展開となっているのである。

そして、この内訳としては、「約7割が金利関連のデリバティブ」という状況であり、実際のところ、「株式」や「為替」などのデリバティブについては、「債券や金利関連」と比較すると、きわめて小さなポジションとも言えるのである。また、「金融の大地震」とも言える「2006年から2009年のGFC(金融大混乱)」で発生した「インフレの大津波」は「金融界のブラックホール」に隠されていたことも見て取れるのである。

このように、今までは、「大津波が、水面下で潜行していた状況」でもあったが、今回の「ソフトバンクのデリバティブ取引」で見えてきた事実は、「実物資産」の「株式」にまで、「金融のメルトダウン」が進展してきた状況とも感じている。つまり、「デジタル通貨の枯渇」が顕著になり始めた結果として、「目に見えるインフレが株式にまで及んできた可能性」のことだが、この時に注目すべき点は、やはり、「金融界のクジラ」である「世界のデリバティブ」の現状、そして、将来の展望である。

具体的には、今後、わずかな「金利の上昇」により「デリバティブの完全崩壊」、そして、「デジタル通貨の完全消滅」が予想される事実のことだが、実際には、世界各国の国家財政が破たんすることにより、世界的な「紙幣の大増刷」が始まる可能性である。そして、この時に考えなければいけないことは、「世界の物価が、どれほどの上昇を見せるのか?」ということであり、実際には、人類史上、最大の規模になるものと感じている。