本間宗究(本間裕)のコラム

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2021.5.15

商品の取引と決済

いまだに、「デフレとインフレの議論」が世界的に活発な状況でもあるが、この点に関して、最も重要なポイントは、「どのような商品が、どのように取引され、そして、どのように決済されているのか?」を具体的に考えることである。つまり、かつては、「現金を持って買い物に行き、商品を受け取って持ち帰る」ということが「個人が行う取引と決済」だったが、現在では、「ネットによる注文とデジタル通貨による支払い」でありながら、「商品の受け渡し」については、個別の配送が実施されている状況とも言えるのである。

別の言葉では、「過去数十年間の変化」として、「デジタル通貨と金融商品の大膨張」が指摘できるが、この時の「取引と決済」については、「コンピューターネットワークの中で、デジタル通貨により決済される」というように、「実物資産が行き来しない状況」となっているのである。つまり、「海外との取引」においても、「ほぼ瞬間的に決済可能な状況」となっているが、今後の注意点としては、「実物資産の取引が、デジタル通貨で決済される事態」だと考えている。

より具体的には、「大量に存在するデジタル通貨が、ごく僅かな数量しか存在しない実物商品に向かった場合に、価格が急騰する展開」であり、また、「買い付けられた実物資産が、どのようにして、買い手に届けられるのか?」という点である。つまり、「仮想現実の中に存在する限りは、たいへん便利に思えたデジタル通貨」は、「現実世界に飛び出てきた場合には、たいへん厄介な代物に変化する」ということである。

そして、特に注目すべき点としては、「金利やインフレ率の上昇」が引き起こす「金融システムの崩壊」であり、実際には、私が最も危機感を持っている「金融界の白血病」のことである。つまり、「紙幣は、コンピューターネットワークの中を流れることができない」という状況のことだが、実際のところ、「2002年に発生したみずほのシステム障害」の時には、「銀行員が数千万もの現金を、人手で運んだ」という状況だったのである。

このように、これから想定される展開としては、最初に、「国債の買い手」が消滅した時に、「紙幣の大量発行」が実施される状況でもあるが、次の問題としては、「大量に発行される紙幣が、どのようにして、実物商品に交換されるのか?」という点である。別の言葉では、「戦後の日本」のように、「信用を失った通貨を受け取る人がいなくなるとともに、実物商品の手当てが難しくなる状況」でもあるが、この点に関して、「1991年のソ連」の場合には、「数か月」という期間で、「ハイパーインフレ」が押し寄せてきたのである。