本間宗究(本間裕)のコラム
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2021.9.28
中国の恒大集団は第二のリーマンとなるのか?
現在、「中国の恒大集団が、第二のリーマンとなるのか?」という疑問が高まっているが、この点については、「金融システムの正確な分析で、理解や予測が可能ではないか?」と考えている。つまり、「リーマンショックが、なぜ、発生したのか?」、そして、「その後、どのような変化が起こったのか?」を、具体的な数字で分析することにより、「今後、どのような変化が訪れるのか?」が見えてくる可能性のことである。
具体的に申し上げると、「2008年のリーマンショック」については、すでに、海外で「GFC(金融大混乱)」という言葉が使われているように、「民間銀行が簿外で保有するデリバティブの残高がピークを付け、減少を始めたこと」が、最も大きな要因だったものと考えられるのである。そして、その後の展開としては、「中央銀行による、いわゆる量的緩和(QE)が実施され、その結果として、マイナス金利まで発生した」という状況だったが、このことは、「デリバティブが産み出したデジタル通貨を利用して、デリバティブバブルの崩壊を隠蔽しようとした動き」とも言えるのである。
つまり、ピーク時に「約8京円」だった規模が、「約6京円」に収縮したものの、現在では、デジタル通貨の枯渇により、「世界各国の中央銀行が、間もなく、大きな決断を迫られている状況」とも言えるのである。別の言葉では、今まで、「民間から資金を借りて、国債の買い付けを実施してきた」という状況だったが、現在では、「借りる資金が枯渇し始め、紙幣の増刷を迫られている段階」となっているのである。
このように、「デリバティブという金融タワー」の残高ピークで発生した事件が「リーマンショック」であり、また、その後、「もう一つの金融タワー」の積み上がりがピークを付けた段階で発生したのが、今回の「中国の恒大集団事件」だったのである。そして、この時の注目点は、「誰が、不良債権を引き受けることができるのか?」ということだが、「2008年当時は、中央銀行が引き受け手となったものの、現在では、紙幣の増刷で国民が引き受け手となる方法しか残されていない状況」とも言えるのである。
そして、このことが、典型的、かつ、古典的な「インフレ」を意味するわけだが、今回、最も難しかった点は、やはり、「デリバティブの二面性」、すなわち、「金融商品と通貨が同時に産み出された状況」とも言えるようである。あるいは、「通貨と商品の非対称性」、すなわち、「商品はフローでありながら、通貨はストックであり、インフレでしか消滅しない」という性質だったものと感じている。