本間宗究(本間裕)のコラム
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2022.1.27
量的引き締め(QT)の実現可能性
1月26日に実施された「米国のFOMC (連邦公開市場委員会)」では、「利上げの後に、量的引き締め(QT)の実施」が述べられていたが、この点には、大きな注意が必要だと感じている。つまり、「大膨張した中央銀行のバランスシート残高を、どのようにして正常化するのか?」、あるいは、「今後、誰が国債を買うのか?」ということでもあるが、実際には、きわめて至難の業とも考えられるのである。
より具体的に申し上げると、「過去数年間に、中央銀行が大量購入した国債」については、その裏側に、「中央銀行の負債」である「民間金融機関からの借り入れ」が存在するのである。つまり、「日本」の場合には、「民間金融機関から約520兆円の資金を借りて、約521兆円もの国債を買い付けた」という状況であり、このことは、「米国のFRB」や「欧州のECB」についても、似たり寄ったりの展開だったことも見て取れるのである。
別の言葉では、「1999年から始まった日本の実質的なゼロ金利」が「世界のお手本」となり、その後、「先進各国が、きわめて無謀な金融政策を実施した」という状況だったわけだが、この理由としては、「1995年前後の米国の金融大混乱」、そして、「その後に大膨張したデリバティブのバブル」が指摘できるのである。つまり、現在の「量的緩和(QE)」と呼ばれる政策については、「1971年のニクソンショック以降、どのようにして、マネーの大膨張が発生したのか?」を理解する必要性があるのである。
しかし、実際の議論としては、単純に、「実体経済の回復により、金利やインフレ率が上昇を始めている」というような「的外れの議論」が、いまだに頻繁に聞かれる状況となっているのである。つまり、政府や中央銀行による「大本営的な発表」が、現在では、「マスコミ」にまで影響を与えた状態とも思われるが、このような状況下で必要なことは、「どのようにして、自己防衛を図るのか?」を、深く考えることでもあるようだ。
具体的には、「中央銀行のバランスシートを減少させると、市場に資金が回らず、1929年の大恐慌のような状態に陥る」という事実を理解しながら、「残された方法としては、以前から指摘していたとおりに、紙幣の増刷以外に存在しない可能性」を考えることである。つまり、「中央銀行のバランスシート残高」については、「今後、より一層の大膨張が予想される展開」のことでもあるが、この時の注意点は、「大量に増刷された紙幣が、貸付金などの名目で民間銀行に行き渡り、その後、われわれの手元に届く展開」に関して、決して見過ごさないことだと感じている。