本間宗究(本間裕)のコラム
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2022.7.28
世界のゾンビ企業
最近、頻繁に使われるようになった言葉として「ゾンビ企業」が挙げられるが、この言葉の定義としては、「本業の儲けを示すEBIT(利払い・税引き前利益)が、3年連続で支払い利息を下回る、設立10年以上の企業」と理解されている。つまり、「過剰債務状態の企業」のことでもあるが、「2021年度の実情」として、7月28日の日経新聞では、「北米・欧州・アジア太平洋の主要国の金融を除く上場企業約24500社の内、全体の約16%に当たる3900社が該当した」とも説明されているのである。
別の言葉では、「約20年も継続した世界的な超低金利状態」という、きわめて異常な環境下でしか生き残れない企業が、現在、世界全体に、数多く存在する状況とも言えるが、すでに始まった「世界的な金利とインフレ率の上昇」を考えると、今後は、数多くの「破産や破綻」が、「企業」のみならず、「金融機関」や「国家」などで発生する可能性が高くなっているようにも感じている。
より詳しく申し上げると、「1971年のニクソンショック」以降、「世界のマネー」が大膨張し、その結果として、「1980年代初頭から始まったデリバティブという金融商品の大膨張が、世界全体の金利を押し下げた」という展開だったのである。つまり、「金利」は「お金の値段」であり、今までは、「大量に存在するマネーを背景にして、超低金利状態が発生し、また、数多くのゾンビ企業が生き残ってきた状況」だったのである。
しかし、今後は、「実体経済」と「マネー経済」との関係性が修復される過程において、「マネーの実質的な急減」、すなわち、「実物資産の価格が、大インフレにより、実質的に、約10倍にまで上昇する可能性」も考えられるのである。つまり、「実体経済とマネー経済の比率が、現在の約10:1から、今後、1:1にまで変化する展開」のことだが、この点については、「過去100年間に、約30か国で発生したハイパーインフレ」が、この役割を担っていたものと考えている。
そのために、これから必要なことは、「どのような企業が、我々の生活にとって、本当に必要なのか?」を考えることであり、実際には、「過剰債務で大膨張した企業や産業などの水膨れ経済」に関して、「これから、どのような運命が待ち構えているのか?」を予想することである。そして、この過程で、本当の「SDGs」が見えてくるものと考えているが、この時の注目点は、やはり、「人々の価値観が、物質文明から精神文明へと移行する可能性」を意味する「東洋文明への移行」だと考えている。