本間宗究(本間裕)のコラム

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2023.1.24

「量的緩和」という名の「金融引き締め」

1月23日に実施された「日銀の共通担保資金供給オペ」には、「開いた口が塞がらないような思い」を持つとともに、「太平洋戦争末期の松脂(マツヤニ)」が思い出された状況でもあった。つまり、日銀が行ったことは、「5年間の資金を約1兆円、0.11%前後の金利で民間銀行に貸し出し、一方で、民間銀行は、0.16%前後の5年国債を買い付けることにより、約0.05%の利ザヤを稼ぐことが可能な取引」だったのである。

別の言葉では、「日銀が民間金融機関に資金を貸し出して、国債の購入を推進する操作」でもあるが、この時の問題点は、「日銀の資本項目には、5年間も固定された低金利の貸付が増えながら、一方で、負債項目には、短期での資金借り入れが増える状況」が指摘できるのである。つまり、現在の「日銀のバランスシート」では、「約3.5兆円の売現先勘定」、すなわち、「日銀が保有する国債を担保にして、金利を払いながら、数日程度の資金を民間金融機関から借り入れる取引」が実施されている状況であることも見て取れるのである。

より詳しく申し上げると、「日銀が、今後、どのようにして資金繰りの問題を解決するのか?」が喫緊の課題となっていながらも、「一時的、かつ、小手先の手法により、時間稼ぎを目論んでいる状況」とも言えるのである。つまり、「太平洋戦争の末期に、燃料確保のために、国民がマツヤニを集めた状況」が彷彿とされるような展開となっているために、現在は、「日本のみならず、世界的な金融敗戦が近い状況」とも感じられるのである。

より具体的には、「約600兆ドルのOTCデリバティブ」と「約330兆ドルの世界債務」という「目に見えない金融ツインタワー」が、間もなく完全崩壊を始める可能性のことであり、今回の「日銀のオペ」は、このことを知らしめる効果があったようにも思われるのである。つまり、「世界的な国債価格の暴落」、そして、「デリバティブのバブル崩壊がもたらすメガバンクの巨額損失」などにより、「世界中の人々が、金融界で、どのようなことが起こっているのか?」を、はっきり認識する可能性のことである。

そのために、これから必要なことは、「お金(マネー)に対する信仰」から解き放たれることであり、実際には、「カール・ポランニー」が指摘する「悪魔のひき臼」により、「人類の行動が、どれほど歪められてきたのか?」を考えることである。つまり、人類に必要なものは「過剰なマネー」ではなく、「持続可能な実体経済に必要な量のマネー」である事実を認識することでもあるが、実際には、間もなく、この事実を認識させられるような「巨大なインフレの大津波」が世界を襲うものと考えている。