本間宗究(本間裕)のコラム
* 直近のコラムは、こちら。
2023.3.22
世界的なクラウディングアウト
現在の「世界的な金融混乱」に関しては、「三次元の経済学による理屈のこね合い」ではなく、「四次元の経済学による歴史的な推移の分析」、そして、「金融システムに関する正確な理解」が必要だと感じている。つまり、「実体経済の約10倍の規模にまで膨らんだマネーの残高」について、「民間企業と個人」や「民間金融機関」、そして、「中央銀行」の「それぞれの部門が、現在、どのような状態なのか?」を歴史的に理解することである。
別の言葉では、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」の時期まで急成長した「デリバティブ(金融派生商品)」が、実際には、「民間金融機関の簿外(オフバランス)取引の拡大」によるものであり、また、その後の「量的緩和(QE)」が、「中央銀行のバランスシート拡大」によるものだった点などを、正確に理解することである。つまり、「デリバティブの大膨張」に関しては、「金融商品」と「デジタル通貨」が、ほぼ同時期に拡大したことにより、「世界の資金が、実物資産に流れず、従来のインフレが発生しなかった状況」だったことも見て取れるのである。
ただし、「2022年の変化」としては、「量的緩和(QE)の行き詰まり」、すなわち、「中央銀行のバランスシートにおいて、民間部門からの借り入れが難しくなった状況」を表すとともに、反対に、「量的縮小(QT)」、すなわち、「中央銀行のバランスシート残高の縮小」までもが実施されたことも理解できるのである。つまり、今までの「量的緩和」の期間には、「超低金利状態を作り出すことにより、中央銀行のみならず、民間部門にまで国債の保有を増やした展開」だったものが、現在の「量的縮小」では、「金利やインフレ率の上昇が、国債価格の下落を引き起こした状況」となっているのである。
より具体的には、最も避けるべき手法である「短期借り、長期貸し」が、多くの金融機関で採用されたために、現在では、「巨額の含み損や不良債権が、民間部門でクラウディングアウトを引き起こしている状況」のことである。つまり、現在では、「民間企業や個人」、そして、「民間金融機関」のみならず、「中央銀行」までもが、「バランスシートの非対称性」が引き起こした「巨額の不良債権」に悩まされ始めているのである。
しかも、今後の注目点としては、現在でも、報道が限られている「デリバティブの実情」が挙げられるが、実際のところ、過去数か月間は、「量的縮小」と「デリバティブの再膨張」が同時進行していた状況だったものが、今後は、「世界的な金融混乱」の加速により、「デリバティブのパンケーキクラッシュ」が、一斉に始まる可能性も想定されるのである。