本間宗究(本間裕)のコラム

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2023.3.27

中央銀行の限界点

「クレディ・スイスの永久劣後債(AT1債)」については、「中央銀行の限界点」を示すとともに、「Too Big To Fail(大きすぎてつぶせない)」という「思い上がりの意識」から、「Too Big To Save(大きすぎて救えない)」という「現実を認識した意識」への転換を表す典型例となったものと感じている。つまり、「市場の規模は、中央銀行よりも巨大である」という「厳然たる事実」に、多くの人々が気付かされるとともに、「金融混乱への対処法」として、「最後の手段」である「紙幣の増刷」に訴えざるを得なくなった可能性のことである。

より詳しく申し上げると、今までは、「デリバティブのバブル崩壊」を隠蔽するために、「中央銀行のバランスシート膨張」という、いわゆる「リフレーション政策」に頼ってきたのだが、今回の「クレディ・スイスの救済買収」については、「中央銀行の見通しの甘さ」が露呈した大事件だったものと考えられるのである。つまり、「米国」を中心にして実施され始めた「量的縮小(QT)」については、「デリバティブの残高を再膨張させながら、金利の上昇により、中央銀行の残高を減らそうとする無謀な政策」だったものと理解できるのである。

別の言葉では、「根源的な問題」である「デリバティブのバブル解消」には目を向けずに、「金利上昇により、国債の表面的な魅力を増やそうとした可能性」のことでもあるが、実際には、「短期借り、長期貸し」の問題が、米国で表面化したことにより、裏に隠されていた「デリバティブのバブル」までもが、今回の「クレディ・スイスの破綻」により、あぶり出されてきたものと想定されるのである。

そして、このことが、私の想定していた「金融ツィンタワーの崩壊(パンケーキクラッシュ)」だと感じているが、この時の問題点は、「コンピューターネットワークの発展」により、「事件の発生が、瞬時に、世界に伝播する状況」でありながら、一方で、「紙幣がその中を流れることができない状況」とも想定されるのである。

つまり、「問題の発生と解決」に関して、「時間的な歪み」が発生するものと思われるが、実際には、「パニックに陥った人々が、慌てて、無謀な行動に走る可能性」である。そのために、今後の注意点としては、「決して、慌てずに、問題の本質を理解すること」が挙げられるともに、「過去の歴史を振り返りながら、以前の混乱期に、どのようにして問題の解決が図られたのか?」などを考える必要性が存在するものと感じている。