本間宗究(本間裕)のコラム

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2023.6.20

植田日銀総裁の苦悩

「火中の栗」を拾った状態となった「植田日銀総裁」にとって、現在の「世界的な金融情勢」は、まさに、「前門の虎、後門の狼」のような状況であり、その結果として、「打つ手が無くなり、苦悩を抱えた状態」のようにも感じている。つまり、他の先進各国のように、「利上げ」を実施すると、「日銀」のみならず、「日本の国家財政」そのものが、破綻の危機を迎える懸念が存在するからである。

具体的には、「約572兆円という日本の名目GDP」と比較して、「1.3倍程度の約774兆円」にまで大膨張した「日銀のバランスシート」、あるいは、「1.86倍程度の約1086兆円」にまで膨らんだ「日本の普通国債残高」に関しては、「通常の手段では返済不可能な状態」であることも理解できるのである。別の言葉では、過去のパターンのとおりに、「紙幣の増刷が引き起こすハイパーインフレにより借金を棒引きにする方法」しか残されていない状況とも言えるのである。

そして、これらの事実については、現在、「世界各国で、大きな注目を浴び始めている段階」に差しかかっており、実際には、「国家の体力」を表す「金利」と「為替」の両面から、「日本の将来」が危惧され始めている状況となっているのである。つまり、「植田日銀総裁が、いつまで、現在の超低金利状態を継続可能なのか?」、あるいは、「キャリートレードの加速が引き起こす円安は、今後、どこまで進展するのか?」という点などである。

しかも、今回は、「日本」のみならず、「西洋の先進各国」や「中露の国々」なども、きわめて厳しい経済情勢に見舞われているために、多くの人々は、「何が何だか、訳が分からない状態に陥っている状況」のようにも感じられるのである。別の言葉では、「現状だけを見がちな三次元の経済学」では正確な現状認識が難しく、「過去の推移を含めた四次元の経済学」が必要な状況とも思われるのである。

より詳しく申し上げると、「過去を遡りながら、現在に匹敵する経済情勢を探す努力」のことでもあるが、実際の状況としては、やはり、「1600年前の西ローマ帝国」まで、時代を遡る必要性があるものと感じている。つまり、「マネーの大膨張が、どのようにして発生したのか?」、あるいは、「パンとサーカス」に象徴される「大都市の生活」が、「どのような推移で実現したのか?」を考えると、結局は、「グローバル共同体」がもたらした「世界的なマネー大膨張」や、その背後に存在する「巨大なデリバティブのバブル」に対する理解が必要なものと考えられるのである。