本間宗究(本間裕)のコラム
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2023.11.14
大都市の空洞化
「村山節の文明法則史学」では、「800年ごとに東西文明が交代するとともに、その時には、約100年間の移行期間が存在する」と説明されている。そして、この時の注目点は、移行期間を象徴する「民族の大移動」に関して、複雑系の学問が指摘するとおりに、「前半の50年間が、大都市への人々の集中期(秩序の形成期)」であり、また、「後半の50年間が、大都市に住めなくなった人々が地方などへと移動する期間(秩序の崩壊期)」でもあるが、現在は、まさに、1600年前と同様に、「西暦376年から始まったゲルマン民族の大移動」の「前半部分」から「後半部分」への転換点のようにも感じている。
具体的には、「米国で顕著になった大都市の空洞化」が、「民族大移動の後半部分」に関する典型的な兆候とも思われるが、この理由としては、やはり、「マネーの縮小がもたらした経済的な困窮」が挙げられるものと考えている。つまり、「1971年のニクソンショック」以降に発生した現象は、世界的なマネー大膨張がもたらした「生活水準の向上」、すなわち、「支出の増加」だったものの、現在では、それに見合う金額の「収入」を得ることが難しくなったものと思われるのである。
より詳しく申し上げると、「1945年前後から始まった世界的な経済成長」により、最初に、「民間企業や個人のバランスシートが拡大し、多くの人々が裕福になった状況」だったが、その次の展開は、「経済の金融化」と呼ばれる「民間金融機関のバランスシート大膨張」だったことも見て取れるのである。つまり、「日本のバブル」に象徴されるように、「民間金融機関のバランスシート大膨張により、実体経済を上回る規模でのマネーが創造された状況」のことである。
その結果として、「犬の身体」を象徴する「実体経済」よりも、「犬のしっぽ」を表す「マネー」のほうが、より大きな規模となったが、この現象に拍車をかけたのが、「1997年の金融危機をキッカケに始まったデリバティブの大膨張」だったのである。つまり、「日本のバブル」と比較して「約30倍の規模」で、「民間金融機関のバランスシート」が大膨張したものの、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」により、「中央銀行のバランスシートが拡大するリフレーション期間」への移行が始まった状況のことである。
このように、冒頭の「米国の大都市における空洞化」に関しては、これほどまでに深い原因が隠されているものと思われるが、残念ながら、この理論が検証されるためには、「今後の数十年」という長い時間が必要なものと考えている。