本間宗究(本間裕)のコラム
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2023.11.29
金融界のホーキング放射
今回の「金(ゴールド)価格の2000ドル越え」が意味するものは「金融界のホーキング放射の始まり」であり、また、「金(ゴールド)に対する国債の敗北」のようにも感じている。つまり、「1980年代の初頭」から始まった展開としては、「信用本位制と呼ぶべき通貨制度において、大量のデジタル通貨が創り出された状況」であり、この時に、大きな役割を担ったのが「デリバティブのバブル」だったものと思われるのである。
しかし、現在は、「民間部門のみならず、中央銀行や国家のバランスシートの全てにおいて、資産価格の下落が始まった状況」のようにも感じられるが、実際のところ、「1980年代の世界」は、「日本のバブル」に象徴されるように、「約3000兆円規模の民間企業や個人のバランスシート大膨張」が発生したことも見て取れるのである。また、その後の展開としては、「2000年前後」からの「約8京円規模のデリバティブバブルの発生」だったことも理解できるのである。
つまり、「1980年から2000年」という期間は、「日本のバブル」の発生と崩壊の時期だったものの、「2000年からの約20年間」は、「世界的なデリバティブのバブル発生と崩壊の時期」だったものと考えられるのである。そして、両方のバブルに共通する特徴としては、「デジタル通貨」という「影も形も存在しない単なる数字が通貨となり、コンピューターネットワークの中を駆け巡った状況」であり、この点については、「金融界のブラックホールが形成されたような状態」とも思われるのである。
より詳しく申し上げると、「仮想現実の世界で、デリバティブという金融商品が、大量のデジタル通貨を創り出した状況」のことでもあるが、この点に関する問題は、「デジタル通貨が金融界のブラックホールの内部にとどまっている限り、実物資産の価格に影響が及ばなかった事実」ともいえるのである。別の言葉では、「金融の逆ピラミッド」の頂点に位置する「デリバティブ」の崩壊が始まった「2008年のGFC(世界的な金融大混乱)」以降、「金融のメルトダウン」により「何でもバブル」が始まったものの、現在では、「実物資産以外の商品におけるバブル崩壊」により「デジタル通貨が紙幣に形を変えて、ブラックホールの外部に流れ始めた状況」とも考えられるのである。
そして、このことが、冒頭の「金融界のホーキング放射」を表しているものと思われるが、今後の展開としては、「限りのある資産」に対して、「大量の紙幣」が流れ込む事態、すなわち、「世界的なハイパーインフレの発生」が想定されるものと考えている。