本間宗究(本間裕)のコラム

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2024.4.24

ゼロ金利からの出口戦略

現在の「植田日銀総裁の目論見」としては、「マイナス金利を解除するとともに、異次元のインフレ政策へ踏み出す覚悟を決めた状況」とも思われるが、この点に関して、最も注目すべきポイントは、「ゼロ金利からの出口戦略」であり、実際には、「どのようにして、金利を上げていくのか?」だと感じている。つまり、「海外との金利差」がもたらす「強烈な円安圧力」により、今後、「通貨防衛のための利上げ」が予想されるものの、「利上げ」を実施した時には、「日銀の赤字決算や債務超過状態に陥る可能性」も想定されるのである。

より詳しく申し上げると、「日銀のバランスシート」における、「約592兆円の保有国債」と「約571兆円の当座預金残高」との関係性のことでもあるが、実際には、「短期資金を借りて、長期投資を実施している状況」であることも見て取れるのである。つまり、「2023年3月に破綻した米国のシリコンバレーバンク」と同様の問題を抱えているために、現在では、「0.25%の利上げ」さえも難しくなっている状況とも言えるのである。

そのために、これから予想される展開は、「利上げ」を加速させながら、「日銀当座預金」と「貸付金」を同時に増額する方法とも思われるが、この時の注目点は、「大量のCBDCが発行される可能性」とも言えるようである。つまり、古典的な「紙幣の増刷」という方法では、「金融界の白血病」とでも呼ぶべき症状、すなわち、「紙幣がコンピューターネットワークの中を流れることができず、決済の問題が発生する可能性」も想定されるのである。

別の言葉では、「デジタル通貨の信頼性を保ちながら、日銀のバランスシート残高を急増させる思惑」が模索されるものと思われるが、この時に重要な意味を持つのが、「BRICS諸国の脱ドル化政策」とも考えられるのである。つまり、「ロシア」や「中国」などの国々が、「米国を中心とした西洋諸国」が作り出した「デリバティブのバブル」を崩壊させる目論見であり、実際には、大量の「貴金属」や「原油」、あるいは、「穀物」などの大量買い付けにより、「デジタル通貨への信頼性」を損なおうとする行為のことである。

より具体的には、「国債価格の暴落(金利は上昇)」がもたらす「デリバティブの完全消滅」とも思われるが、実際には、「1991年のソ連」と同様に、「国債の買い手」が消滅し、その結果として、「国債の価格が暴落する可能性」のことである。つまり、「クラウディングアウト」、すなわち、「民間資金が政府により吸い上げられ、金利が上昇する現象」の加速により、「長期国債のみならず、短期国債についても、買い手が消滅し、金利が急騰する可能性」のことである。