本間宗究(本間裕)のコラム
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2024.5.5
マネーとクレジット(1)
「ゴールド(金)がマネーで、その他はすべてクレジット(信用)である」というJPモルガンの言葉のとおりに、過去100年余りの期間は、「ゴールドを基にして、預金や債券、そして、デリバティブなどの資産が創り出された」という状況だった。つまり、「バランスシート」という言葉のとおりに、「資産」と「負債」が両立て積みあがっていったわけだが、注目すべき点は、「民間企業と個人」、「民間金融機関」、そして、「中央銀行」というように「金融システムそのものが、三つの部分に分かれている状態」だと感じている。
より詳しく申し上げると、「1990年の日本バブル崩壊」以降、「不良債権が、どのように移行していったのか?」を考えると、結局は、「民間部門で発生した不良債権が、その後、民間金融機関、そして、最後には中央銀行に移行した状況」だったことも理解できるのである。つまり、過去30年以上の期間、「不良債権」の規模は増加し続けていたものの、居所を変えていたために、全体像が見えにくくなっていた状況のことである。
しかも、今回は、「1998年のLTCM事件」などをきっかけにして、「民間金融機関が、オフバランス(簿外)でデリバティブを大膨張させ、バランスシートの急拡大を実施した」という状況だったために、より一層、「金融システムの全体像」が見えにくくなったものと考えられるのである。別の言葉では、西洋の先進各国が協調して、金融システムの防衛を図った結果として、大量のデジタル通貨が創り出されるとともに、「デジタル革命」といわれる状況が発生した展開のことである。
しかし、現在の問題点としては、「バランスシートの非対称性」、すなわち、「資産価格は上下変動に見舞われるものの、負債価格は一定である」という理由により、「資産価格の下落が、大量の不良債権を、世界的に発生させた状況」であることも見て取れるのである。つまり、現在では、「民間部門のみならず、中央銀行においてさえも、大量の不良債権に悩まされている状況」となっており、しかも、「民間部門の資金が、国家によって、ほぼ吸い上げられた事態」とも想定されるのである。
そのために、これから予想される展開は、「世界各国が、大量の紙幣の増刷を実施する可能性」でもあるが、その前に実施される政策は、「CBDC(中央銀行デジタル通貨)の大量発行」だと考えている。つまり、「紙幣には、コンピューターネットワークの中を流れることができない性質」が存在するために、「CBDCの発行」は、その後、「政府への信頼が喪失するとともに、紙幣に交換される展開」となることが想定されるのである。