本間宗究(本間裕)のコラム

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2024.5.30

ジェイミー・ダイモン氏の警告

JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)による警告は、最近、頻度を増しながら、内容面での変化が見られる状況となっているが、具体的には、以前の「米国債務残高の持続性」に関する疑問点から、現在では、「1兆7000億ドル(約268兆円)に上るプライベートクレジット(非公開融資)」に関して、「地獄を見ることになりかねない」とまでコメントしているのである。そして、この時の注目点としては、多くの人が懸念する「株式バブルの崩壊による株価の急落」ではなく、「米国債」や「非公開融資」など、「債券」や「金利」に関する問題意識の存在が指摘できるものと感じている。

つまり、現在の「金融問題の本丸」が、決して、「株式のハイテクバブル」などではなく、「1980年代初頭から始まったデリバティブの大膨張」であることを、暗に示しているものと考えられるのである。別の言葉では、「ジェイミー・ダイモン氏は、デリバティブの実情を知り尽くしている人物」とも言えるために、現時点では、「ホンネ」が言えず、「タテマエのコメント」に終始している状況とも思われるが、一方では、「良心の呵責」により、「多くの人々に警告を発せざるを得ない心理状態」のようにも感じられるのである。

より詳しく申し上げると、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」の時にピークを付けた「デリバティブのバブル」は、その後の、「世界的なQE(量的緩和)」により、「バブル崩壊の事実」が隠蔽された状況だったものと想定されるのである。つまり、「先進各国の中央銀行がバランスシートを大膨張させながら、リフレーション政策を実施することにより、バブルの処理を計ろうとした」という状況だったものの、実際には、「金融メルトダウンが、何でもバブルを発生させた展開」だったことも見て取れるのである。

より具体的には、「債券のバブル」に続き、「不動産のバブル」、そして、最近の「株式のバブル」が発生した展開のことでもあるが、実際の状況としては、「海上の津波」のように、「人々が気付きにくい仮想現実におけるバブルの発生と崩壊」だったものと考えられるのである。別の言葉では、「デジタル通貨に関する、いろいろなバブルの発生と崩壊」のことでもあるが、現在の問題点としては、「何でもバブルの最終章」である「実物資産のバブル」が始まった可能性とも言えるのである。

つまり、「世界的なハイパーインフレの発生」が危惧される状況でもあるが、この時の注目点は、やはり、「金融界の大量破壊兵器」と呼ばれる「デリバティブ」の完全崩壊であり、短期間のうちに「デジタル通貨」が効力を失う可能性だと感じている。