本間宗究(本間裕)のコラム

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2024.6.11

実体経済と金融市場

現在は、経済統計数字の発表に一喜一憂する人が増えている状況とも思われるが、40年ほど前のアメリカでは、「多くのファンドマネージャーが経済統計を無視しているような状態」でもあった。つまり、私自身の経験として記憶に残っていることは、「いろいろなファンドマネージャーから、経済統計数字の信ぴょう性に対する疑問を投げかけられた」ということであり、現在でも、この教えを忠実に守っている状況とも言えるのである。

別の言葉では、「実体経済」よりも「金融市場」を理解することが、「投資の実践で、最も重要なポイント」であり、その理由としては、「40年前と現在とでは、金融市場に関して、劇的な変化が発生している状況」が指摘できるからである。また、この点の理解が、今後、より一層、重要性を増すものと感じており、その理由としても、「今後、金融市場において、未曽有の規模での大混乱が発生する可能性」が挙げられるものと考えている。

より具体的には、「ストック(残高)」である「マネーやクレジット」と比較して、「フロー(流れ}」である「実体経済」に関しては、「時間的な連続性」の面で予想が難しい点が挙げられるのである。つまり、「昨日と今日、そして、明日」という時間的な関係性において、「商品の売り上げ」などは、「ある日、突然、受注がゼロになる可能性」も考えられるために、実体経済に関する統計数字については、「政府や金融当局者による数字の操作などの可能性」も合わせて、大きな信頼を置かないほうが望ましいものと思われるのである。

しかし、一方で、「マネーやクレジットの量」については、「OTCデリバティブを除いて、比較的に予測が易しい状況」とも言えるために、「過去40年あまりの期間は、この点を理解することにより、投資で成果を上げることができた状況」だったことも思い出されるのである。つまり、「マネーやクレジットの性質」を理解することにより、「次に、どのようなことが起こるのか?」が判断できた状況のことである。

そして、この点が、今後、「ブラックスワン」と呼ばれる「人々が思ってもいなかったような事件」を発生させるものと思われるが、具体的には、「金融市場の観点からは、間もなくして、財政ファイナンスによるハイパーインフレの発生」が想定されるからである。しかし、一方で、多くの人が注目している「実体経済」においては、「大膨張したマネーやクレジットの効果により、表面的な好景気が想定される状況」となっており、このことは、典型的な「ナイアガラの滝の前の船上パーティー」のような状態とも思われるために、今後は、今まで以上の注意が必要とされるものと感じている。