本間宗究(本間裕)のコラム

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2024.6.24

1998年と2008年の金融混乱

今回の「農中の巨額損失」に関しては、「国内と国外で、大きな認識格差が存在する状況」とも思われるが、具体的には、「国内では、それほど心配する必要がないと考える人が多い状態」でありながら、「国外では、私と同様に、この事件をキッカケにして、世界的な金融システムが崩壊する可能性を危惧する人が増えている状態」とも言えるからである。別の言葉では、「1998年と2008年の金融混乱」を正確に理解するかどうかで、現状認識における格差が発生している状況のようにも感じられるのである。

より詳しく申し上げると、「1998年の金融混乱」については、基本的に、「日本の土地と株式のバブル崩壊」が主な原因であり、この時には、「日本を中心として、民間金融機関のバランスシート大膨張が発生した状況」だったことも見て取れるのである。つまり、「資産と負債が同時に大膨張したものの、バブル崩壊後は、資産価格だけが急減したために、大量の不良資産が発生し、金融システムが崩壊寸前に陥った状況」のことである。

そして、この危機を救ったのが、「欧米の金融機関で大膨張したデリバティブのバブル」であり、実際には、「オフバランス(簿外)でデリバティブの残高を大膨張させながら、デジタル通貨を大膨張させた展開」のことである。また、「2008年の金融大混乱」に関しては、「日本の土地バブルと比較して約30倍規模のデリバティブ大膨張」が限界点に達した結果として、いわゆる「QE(量的緩和)」という名目で、「中央銀行のバランスシート大膨張」が実施された状況だったことも理解できるのである。

つまり、「リフレーション政策」という「中央銀行が民間部門の資金を利用して国債などを買い付ける手法」が取られたものの、現在では、この手法が限界点に達したことも見て取れるのである。そして、現在では、「デリバティブのバブル崩壊がもたらした金融システムの崩壊危機」と「中央銀行が取れる手段の枯渇」というように、「世界全体で、通貨制度と金融システムが崩壊する可能性」が危惧されるほどの、きわめて危機的な状態とも言えるのである。

そのために、これから中央銀行が取れる手段としては、「CBDC(中央銀行デジタル通貨」の大量発行)か、あるいは、「古典的な紙幣の大増刷」しか残されていない状況とも想定されるが、問題は、この点の理解に関して、「日本」と「海外」とで、大きな開きが存在する状況であり、実際には、今回の「農中の巨額損失事件」からもわかるように、日本で、ほとんど危機感が存在しない状況のことである。