本間宗究(本間裕)のコラム
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2024.7.14
1970年代のアメリカと1991年のソ連
現在の世界経済に対する見方としては、「リセッション(景気後退)」や「スタグフレーション(景気悪化とインフレの混在状態)」、あるいは、「ハイパーインフレ(制御不能なインフレ)の発生懸念」などが存在するものと感じている。別の言葉では、「民間の産業部門」や「民間の金融部門」、そして、「中央銀行や国家の資金繰り」に関して、「どの部門を見るかによって、いろいろな意見や見方が出てくる状況」のようにも感じられるのである。
そのために、今回は、「スタグフレーション」を経験した「1970年代のアメリカ」と「ハイパーインフレ」を経験した「1991年のソ連」を比較しながら、「それぞれの時代に、各国で、どのようなことが起きていたのか?」を考察してみたいと思う。具体的に申し上げると、「1970年代のアメリカ」においては、「1971年のニクソンショック」により「通貨や金融システムに関する不安」が存在していた状況下で、「民間の産業部門における景気後退」が始まったものと想定されるのである。
そして、結果としては、「当時のFRB議長だったボルカー氏が、20%前後にまで金利を引き上げる政策を実施したことにより、インフレが収まった」という結果に落ち着いたが、当時の「国家債務のGDP比率」については「約35%」というように、「国家や中央銀行の資金繰り」に関しては、ほとんど問題がなかった状況だったことも見て取れるのである。しかし、一方で、「1991年のソ連」に関しては、「社会主義や共産主義国家の例にもれず、非効率的な生産方式や国民の労働意欲の欠如などにより、民間の産業部門における衰退は、1980年代から明らかな状況」だったことも理解できるのである。
しかも、このような状況下で、「中央銀行や国家の資金繰り」に問題が発生し始めたために、結果としては、「国債の増発」を実施したものの、最後には、「国債の買い手が消滅したために、インクがなくなるまで、紙幣の大増刷が実施された状況」だったのである。つまり、「スタグフレーション」と「ハイパーインフレ」の境目としては、「国債の買い手が存在するか否か?」が挙げられるものと思われる、現在の世界では、いろいろな国々で、「国債の買い手が消滅する可能性」が危惧されている状況ともいえるのである。
このように、現在では、西洋諸国のみならず、かつての共産諸国を含めて、世界全体が、「ハイパーインフレの発生懸念」に悩まされている状況とも思われるが、この点に関する重要なポイントは、やはり、「民間部門だけではなく、中央銀行や国家の資金繰りを確認すること」だと考えている。