本間宗究(本間裕)のコラム

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2024.7.25

景気と金利の関係性

現在は、「景気の悪化に伴い、金利が世界的に低下する」という意見が主流となっているようだが、この点には、大きな注意が必要だと感じている。つまり、「1980年代初頭」から約40年間にも及んだ「世界的な金利低下」については、「1971年のニクソンショック」から始まった「信用本位制と呼ぶべき通貨制度」において、「民間金融機関の表と裏のバランスシート大膨張」が、大きな影響力を与えたものと考えられるからである。

別の言葉では、「1971年から現在までの約53年間」に関して、「前半の約26年間」と「後半の約26年間」に分けて、「民間金融機関の資金繰り」などを丁寧に分析する必要性があるものと感じられるのである。つまり、前半が、「日本を中心にして、民間金融機関のバランスシートが正常な残高膨張を見せた状況」であり、実際には、「約2500兆円規模にまで増えた日本の土地の時価総額を、資金面で支えた状況」のことである。

より詳しく申し上げると、「ピーク時の信用乗数が約13倍」というように「バブルのピーク時には、中央銀行が出したベースマネーが、市場で約13倍にまで膨張した状況」だったものの、その後の「バブル崩壊」により、「不良債権が民間金融機関に移行するとともに、最後には、金融システム崩壊の危機に直面した」という展開だったことも見て取れるのである。また、その後は、「メガバンクと言われる民間金融機関を中心にして、簿外でデリバティブの残高を急激に膨張させた」という展開だったが、この結果として発生した現象は、「実質的な信用乗数が急激に増えた状況」とも想定されるのである。

つまり、「デリバティブの実態」が明らかになっていないために、実際の数字的な検証は、後世の研究に委ねざるを得ないものの、「1998年から現在までの約26年間」においては、「大量のデジタル通貨が創造された結果として、マイナス金利までもが世界的に発生した状況」だったことも理解できるのである。別の言葉では、「大量の資金が金融市場に存在した状況」だったものの、その後は、いわゆる「量的緩和(QE)」により、ほとんどの資金が国家に吸い上げられるとともに、「クラウディングアウト」という「民間部門の資金不足がもたらす金利上昇」が発生したことも見て取れるのである。

このように、現在では、「民間部門における資金不足」が、世界的に顕著な状況となり始めており、今後の「景気の悪化」は、「民間部門の資金不足」や「税収減」を促進させるものと思われるのである。そのために、これから憂慮すべき事態は、「景気悪化時の金利上昇」や「財政ファイナンスがもたらす世界的なハイパーインフレ」だと考えている。