本間宗究(本間裕)のコラム

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2024.8.20

先祖の遺産を喰い潰した放蕩息子

財務省によると、「2025年度予算案における国債利払い費の要求額が28.9兆円にまで急増した状況」と報道されているが、この点については、「先祖の遺産を喰い潰した放蕩息子」のような状態のようにも感じている。つまり、「日本の国家財政」を「個人」に例えると、「年収700万円程度の人が、年間に1200万円程度の支出を行い、しかも、約1億2000万円程度の借金を背負っている状況」とも理解できるからである。

そして、「なぜ、このような無謀なことが可能なのか?」という理由については、ひとえに、「戦後の日本人が築き上げた貯蓄」の食い潰しが挙げられるが、一方で、「2024年の利上げ」に関しては、「過去の遺産の喰い潰し」と「高利貸しからの新たな借金の始まり」を表しているものと考えている。別の言葉では、「過去20年余りの期間に実施された、デリバティブの利用による超低金利政策」が世界的な転換点を迎えた結果として、日本までもが、金利上昇の波に見舞われた状況のことである。

そのために、これから想定される展開としては、「税収の約4割が利払い費に費やされる状況が、今後、より一層、悪化する可能性」であり、また、「国債の買い手が消滅した時に、財政ファイナンスが実施される可能性」ともいえるようである。つまり、「個人」の場合には、「自己破産」という結果になる場合が多いものの、「国家」の場合には、「最後の手段として、紙幣の増刷が実施される可能性」が残されているのである。

より詳しく申し上げると、「1991年のソ連」では、「最後の段階で、インクが無くなるまで、紙幣の大増刷が実施され、その結果として、ルーブルの価値が、短期間のうちに3000分の1にまで急減した」とも言われているのである。つまり、「国家の財政破綻」については、ほぼ例外なく、「紙幣の大増刷」につながるものと思われるが、実際の状況としては、「ほとんどの国民が、実際のハイパーインフレに遭遇するまで、このような悲惨な事態が発生する可能性を無視する状況」であることも理解できるのである。

別の言葉では、「人生における慣性の法則」ともいえる「今日は昨日の続きであり、また、明日も今日の続きである」というような認識を持つ傾向が強いために、「小学生でも理解できるような国家財政の計算」までもが無視される状況のことである。つまり、「臭いものには蓋」、あるいは、「嫌なものは無視」というような態度が取られた結果として、最後の段階で、もっとも危機的な状態ともいえる「世界的なハイパーインフレの発生」に見舞われる展開のことである。