本間宗究(本間裕)のコラム

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2024.8.30

ゼロ金利バブルの崩壊

「マスコミの特徴」として挙げられる点の一つに、「バブルの崩壊前はバブルを礼賛するものの、バブルの崩壊後は、一転して、バブルの非難と犯人探しに奔走する事実」が存在するものと考えている。そして、現在、この対象となっているのが、「ゼロ金利のバブル」ともいえるようだが、実際のところ、今までは、「日銀の超低金利政策」などに対して、まともな分析がほとんど実施されず、また、「日銀のバランスシート大膨張」についても、否定的な意見が見られないような状況だったことも見て取れるのである。

具体的に申し上げると、「日銀の当座預金」に関して、従来は、「準備預金」という名称であり、「残高の増加は金融引き締め、そして、減少は金融緩和」という状況だったものが、現在では、反対に、「当座預金の増加は金融緩和である」と理解されているのである。つまり、「金融面における大本営発表」のような事態が、「2000年前後から始まっていた状況」だったが、「マスコミの反応」としては、ご存じのとおりに、最近まで、「日銀のバランスシートや国家財政赤字の増加」に関して、ほとんど問題視してこなかったのである。

ところが、最近の変化としては、「野放図な国家財政に対する警告」の記事が、頻繁に掲載される状況となっており、この理由としては、「日銀のゼロ金利解除」が挙げられるものと考えている。つまり、「ゼロ金利のバブル」が存続している状況下では、「MMT理論」や「異次元金融緩和の妥当性」などが紹介されていたものの、いったん、「ゼロ金利政策」が解除されると、今度は、突如として、「誰が国債を買うのか?」などの意見が出る状況となっているのである。

別の言葉では、現在のような「世界的な国家財政危機」に関しては、30年以上も前から指摘されていたことであり、現時点で必要なことは、「なぜ、30年も、問題の先送りが可能だったのか?」の説明ともいえるのである。具体的には、「1997年から98年にかけての金融混乱」に関して、「デリバティブの大膨張により、民間金融機関のバランスシートが簿外で大膨張した結果、大量のデジタル通貨が創造された事実」が、「国家債務問題の隠蔽を可能にした原因」ともいえるのである。

そのために、今後の注意点としては、「当時と比べて、不良債権の金額が約30倍にまで増えた事実」であり、また、これから想定される「世界的な金融大混乱」に関して、「人類史上、未曽有の規模となる可能性」が指摘できるが、この点に関して参考になるのは、やはり、「1600年前の西ローマ帝国の崩壊」しか存在しない事実のようにも感じている。